昭和の風林史(昭和四八年二月二十三日掲載分)

破壊的行為に 業界は防禦せよ

影響力の大きい仕手本尊及び機関店は良識と責任を持たなければ業界の犠牲は大きなものになる。

「庭芝を焼く少しづつたのしみに たけし」

小豆相場は巨大な投機家の先限買い作戦によって、穀取業界は不当な指弾を社会から受けようとしている。

それは①仮りにインフレで②換物人気が沸騰しているとは言え③豊作で品物が豊富なのに④異常高を示しているのは⑤取引所市場に⑥巨大な投機家が介在し⑦行き過ぎた思惑をしているのに⑧取引所当局は適切な手段を講じなかった―ためだ。

そういうふうに社会から攻撃されても、いやそうではない―と言えない。
現物は取引所市場にヘッジされているけれど、先々と強引に買っていく巨大な投機家の巧妙な作戦で、ヘッジしながら場勘定で攻められ、しかも現物価格は低く、当先のサヤがかつて見たこともない異常な開きかたであるため、期近買いの先売りというサヤ取り運動が展開される。仕手筋はこの業界のキャパシティを上回る資金をもって、時に煽り、時に強引。

いうなら巧妙な作戦ではあるが、行き過ぎたやり方と言えるし、市場機能を破壊してでも儲ければよいというニヒルで亡国的な心の寒さを感じる。

取引所も取引所だが、買い本尊も、そしてまたその機関店も、この行為の業界にあたえる影響と、その占めるウェイトについて、良識のもとに充分配慮ある行動を採らなければならないと思う。

それが影響力の大きい仕手本尊の責任であり、また機関店の良識と責任であろう。

もとより仕手戦に、ほどほどという事はあり得ないが、やり過ぎたあとにどれだけ大きな犠牲を業界に押しつけるかは、仕手の責任と機関店の良識によって判断しなければならない。

業界も、取引所が取引所である現在(はっきり言えば無策無能)、業界の置かれている今の立場や影響力を考え、いやしくも内閣総理大臣らから厳しく批判される事のないよう、適切な処置を講ずるよう、無策無能な取引所当局者に激しく注意するぐらいでなければ、穀取業界は再び信用を落としてしまうのである。

思うに、つくづく穀物取引所にも傑出した人物のいない事を痛感する。業界の前途は多難だ。

●編集部注
 この当時業界にいなかったので詳しい状況は解らぬが、狂乱のパラジウム相場の時の世の指弾っぷりは知っている。

 それでも、相場は無慈悲に動くものである。

 機会があれば、一度2000年2月以降の東京パラジウム日足を見てみるとよい。それと比べれば、この時の小豆相場はまだ動いているほうだ。

【昭和四八年二月二二日小豆七月限大阪一万三九二〇円・一九〇円安/東京一万三九二〇円・一七〇円安】