昭和の風林史(昭和四八年三月九日掲載分)

怪物が狙う!! 夏の天候異常を

過剰流動性という怪物がインフレと異常気象という二ツのエネルギーで小豆、手亡を食い漁ろう。

「一畑は接木ばかりの昼淋し 鳴雪」

過剰流動性という怪物がインフレというエネルギーを食いながら、次々と商品取引所の機能を破壊していく。

毛糸相場も生糸相場も、ピーンと天井に張りついてしまった。綿糸、人絹、乾繭も実勢面から怪物の餌食になろうとしている。

過剰流動性という怪物を退治すべく政府も日銀も躍起だが、効果がない。

土地を食い漁り、株を食い、大豆も木材もガーゼも紙も、そしてあらゆる天然繊維を食い、巨大なしっぽを引きずりながら荒れまわっている。

その影響で、商品取引所は規制の上に規制、新規売買は禁止というバリケードを築いたが、残されているゴム取引所と小豆、手亡という、天災期にかけてきわめて激しい動きをする相場が、当然狙われる。

各取引所は自衛手段として増証、建て玉制限というバリケードを築いたけれど巨大な怪物は異常天候というエネルギーによって、いつ、この小豆、手亡に襲いかかるか判らない。

すでに、小豆の当面の上値は、一万八千円であるという声を盛んに聞く。

先年、小豆は二万一千円という値段を付けた。

あの時は〝凶作下の仕手がらみ〟という相場だった。

今回は〝インフレ換物人気下の異常天候〟であり、プラス〝仕手傾向色強い需要期相場カケル他

市場からの投機資金流入〟―という方程式になる。しかもそれらの分母(横線引いた分数の下にあるもの)は世界の異常気象プラス世界的食糧不足カケル世界的インフレであり、通貨不安という〝剰数〟がつく。

以下のものを、供給総数字プラス取引所の規制というもので解いた場合、一万八千円プラス・アルファ五千円ということになり七月、八月という流動の時間的時点のそれぞれを探ればどのようなものになるか判らない。

ともかく大変な時代である。だから大変な値段がつく。人々は天を仰いで嘆息するけれど、

地球をとりまく天は、激しく怒っているようだし、国内における過剰流動性という怪物はまだまだ成長するだろう。

この前にあっては田中内閣など小さく見えるが穀取など、ものの数ではないようだ。

●編集部注
まるで商品取引所にリバイアサンがやって来たような書きっぷりである。

ゴジラ級の怪物が取引所を襲うのはこの後である事を我々は知っている。

日本橋小網町一帯は焼け野原と化し、穀物取引所もなくなってしまった。

【昭和四八年三月八月小豆八月限大阪一万五三九〇円・七〇〇円高/東京一万五二八〇円・六八〇円高】