昭和の風林史(昭和四八年三月十四日掲載分)

決然売り方針 忍びよる大暴落

小豆相場は天井した。市場総強気だが、決然売り方針。春風を斬れ、目先の反騰成り行き売りだ。

「落ちて皆ころがる花や椿坂 虚子」

電光影裏春風を斬る。珍重大元三尺の剣。

ようやく小豆が相場らしくなった。

いままでは、ただ買ってさえおれば、女・子供でも儲かった。

しかし、昨年九月19日の安値(大阪)七千七百五十円から一万六千三百円まで実に〔八千五百五十円〕高した相場、日柄では半年になんなんとし、値段で十割高を超える。

さしものインフレ人気(ムード買い・仮需要)も燃え尽きんとす。
人盛んな時、天に勝ち、天定まって人に勝つ。

規制は強化され、なお投機熱が鎮まらなければ穀取の立ち会い停止も、またやむを得ない―という主務省の強い態度に、業界は反省の色を見せだした。

しかし、今年の夏は冷夏が予想されている。

また、閉鎖されている他市場からの投機資金も穀物の思惑に走る。

各地穀取は必死でバリケードを築き、市場防衛と投機熱の鎮静にやってきた。

さて、相場は、市場総強気。ヘッジ玉まで場勘に耐えかねて踏まされるという凄さである。

しかし、遠くからこの相場を眺めれば、かなりきつい反落があってもよい地点と時点にある。

忍びよる暴落である。

豊富な品物は、大豆、木材に見る如く過激な価格高騰中は姿をまったく隠してしまうものであるが、いったん、天井を打てば逆に売り急ぎとなるものだ。

定期市場は、ギッシリと現物が売りつながれている。人気が燃え尽き、市場が冷静になってみると、恐らく慄然とするであろう。

当面、予測出来る下げ材料は作付け面積の大幅増反であり、政府の緊急輸入対策である。そして、取り組み内部要因(高値飛びつき買い)の重さと日柄による相場の老境入りなどがあげられる。

相場は、あくまで相場である。すべての(上げるべき)材料を食い潰せばいかなる怪物でも自壊する。

すでに小豆、手亡の線型は天井型を示している。

これが逆襲強烈反騰しようとも、決然売り向かえば音をたてて崩れよう。

行きすぎた相場は、また下げる時も行きすぎるのである。売るのが怖いという気持ち、これがこの相場を見るポイントである。

●編集部注
古人曰く君子豹変す。 

これぞ相場師の文章。

未曾有の上昇相場が形成されるには、それ相応の量の売り玉が市場に出回らなければならない。

【昭和四八年三月十三日小豆八月限大阪一万五五一〇円・二六〇円安/東京一万五四九〇円・三〇〇円安】