弱気は危険だ 凶作予想を買う
小豆相場は強気方針でよい。冷夏予想とインフレに変わりはない。出直りは案外早いだろう。
「何迷う彼岸の入り日人だかり 鬼貫」
農林省は小豆の輸入ワク(47年度)を拡大した。三百二十万㌦の割当は、中国小豆およそ一万㌧輸入に見合うものである。
しかし相場のほうは先刻織り込み済みである。
中国が果たして、それだけの量を輸出するか。仮りに商談が進んでも入荷の時期は随分先の事になる。
まして、倉庫という倉庫、只今現在どこの倉庫も品物で一杯。買い占め物資もあるだろうし、国鉄順法闘争の影響もある。いやそれ以上に日本の経済面における流通経路が革命の途上にあって、値上がり、買い占め等の思惑要素がからむため、簡単に品物を輸入したからとて、倉庫に置ける状態ではない。
小豆を緊急輸入しても指定倉庫で証券を組まなければ相場がどれほど高かろうと渡すわけにはいかない。
それはそうと文芸春秋四月号で〝饗宴の時代から飢餓の時代へ〟―は読むものをして寒気をもよおす。気象庁図書課の根本順吉氏は世界の異常気象を判りやすく説明している。
文春四月号は豊かさの終焉と題して特集を組み、このほかに〝日本株式会社石油倒産す〟。〝自民党が野党になる日〟―など、充分に読ませるし、考えさせられた。
また、相場、物価を考えるうえにおいてダイヤモンド社の旬刊〝経済情報〟連載の「インフレと株式」が大変参考になる。大正時代のインフレ、昭和六年以後のインフレが、いかにひどいものであったか、その構造を分析している。
例えば昭和六年横浜生糸五六五円が同十年一、〇七一円。89%高。大阪綿糸20単九二円が昭和十二年三倍の二八三円。米一石一八・35円が三五・6円という値上がりを示し、現在のインフレが、まだまだ序の口である事を知らしめるのだ。
小豆相場にしても、古い考えの需給観やケイ線主義、あるいは値ごろ観は、やはりついていけなくなろうし、それらの動きが理解できない事は、とりもなおさず相場に逆らったりして、取り返しのつかない大損をまねく事になる。
要は視野を広く持つ事である。
そういう観点から小豆相場を考えれば、中途半端な弱気観は無用であろう。
●編集部注
相場は一筋縄では行かぬ事は誰でも知っている。
そして相場は意地悪だ。
信念を持って臨まなければならないが、そんな信念が揺らぐような相場がやって来て、損切りした所で思惑通りになる。
【昭和四八年三月十七日小豆八月限大阪一万四一一〇円・九〇円安/東京一万四一八〇円・一一〇円安】