昭和の風林史(昭和四八年三月十七日掲載分)

再び買い方針 大勢は上値指向

暴落した事によってこの小豆は大なる妙味を持つ事になる。再び買いの時代がくるのだ。

「海の青そこまで晴れつ白子干 水町」

まるで天からまっ黒な丸太棒を垂直に落としたような凄い下げ方であった。

投げも投げたり。

これでまた相場が面白くなる。

すぐに、千円幅も二千円幅も反騰するかどうかは判らないが、ここからあと安くなっても千円幅。先限一万三千円台は買い場―という見方が出来る。

しばらくは逆張りの動きかもしれない。

ああだ、こうだ―と、また強弱を、持って回れる相場になる。

それにしても今回の暴落は穀取業界を蘇生させた。少なくとも死の淵から遠ざかった。誠に御同慶にたえない暴落だ。

市場さえ潰さなければ、天候相場にかけて商いが弾む。

本年は完全な冷夏型の天候と気象庁は発表している。

従って天災期限月の安値は売り込むわけにはいかない。

日曜日は春の彼岸入り。相場界では〝彼岸底〟という言葉もある。

小豆は彼岸の需要。行楽、花見のシーズン。

品物は豊富にあるとはいえ、過剰流動性の問題が解消したわけではない。

騰げかたが、あまりにも急で激しかったがために強烈な規制を呼び、輸入を刺激した。

その反動で崩れた。

しかし大勢的には、状況が変化したわけではない。

ここで弱気になると取り返しがつかなくなろう。

まだ安値を残しているかもしれないが、千円ぐらい引かされるつもりなら玉を細かく割って買いさがる事。

小豆は一万二千円地相場。冷夏予想の天災期を前途に控えているから、その分だけ危険負担を買って一万三千五百円~四千円。

まずそのあたりが妥当な水準ではなかろうか、という見当がつけられる。

過去に経験した仕手崩れというようなものでもない。今回の崩れは相場本来のリズムからきたもので多分に日柄経過という面があった。

規制が利いたという見方や緊急輸入方針が響いたという見方もなりたつが、相場が、やはり日柄の面でモロくなっていたことは事実である。しかし下げてしまえばこれからは、再び悪目買い、突っ込み買いでよい小豆だ。

●編集部注
 規制が効いたと?

 冗談いっちゃあ困りますなぁ―。

 行間から哄笑が漂う。

 お上が市場に介入するとロクな事がないのは江戸の御世からの常識。

 遅かれ早かれ、大なり小なりトガメを受ける。

【昭和四八年三月十六日小豆八月限大阪一万四二〇〇円・九〇円高/東京一万四二九〇円・二〇〇円高】