昭和の風林史(昭和四八年三月三十日掲載分)

「日輪に消え入りて鳴く雲雀かな 蛇笏」

名古屋大石商事の大石俊司社長は『規制も強化され、降ろすだけ(買い方は)降ろされた格好。売り方は場勘も入って力がついたところ。主力筋は静観のようだが(強気の)方針に変わりはないようだ。週刊誌などに追われて大変らしいが、御本人も自重するところだ―と自覚している。まあ今週一杯は、こういう地合いで、活気を見せるのは来週にはいってからでしょう』。

大垣の大石吉六(会長)氏はどのようにこの相場を見ているのですか?。

『強いですよ。天候相場になれば大勢二万五千円もあるだろう―などと言って端の者も煙に巻かれているようですアハハ…』。

大垣の大石吉六氏は大層お元気。『これでいいのでしょう(軟弱なほうが)。私はもう少し下げてもよいと思う。まあ規制が厳しくなりすぎたのでやりにくいという声も聞くが、天災期に入ったら、こんなところにじっとしている相場じゃないです。私は早くから大正七、八年当時の米相場の時と同じだと思っている。石当たり23円の米が29円に乗せて米騒動になったが、政府が幾ら抑えても米価は上昇した。結局大正八年には52円69銭まで行ってしまった。まあ、今はインフレ人気の中だるみでしょう。しかし自然の動きは誰が抑えようと上に行ってしまう。そうです二万円があってもおかしくないと思う私はカンカンの強気です。桑名も週刊誌に、ああ書かれては、かなわんなと言っていますが、正正堂堂儲けたお金だし、何も悪い事をしているわけではない。天狗にならぬよう本人も自重していますが、考え方は今までと変わりないですよ』。

筆者はケイ線的に見て、ここで下げても八限三千三百円までと思う。

当面五日の在庫発表。十日の作付け予想。十五日からの交易会(中国は今年も干ばつを伝える)等が材料であるけれど、来月は投機家好みの二日新ポである。

いまのうちに水準を低くしておくことが、とりもなおさず第四ラウンド以降での活動場面が広くなるわけで、強気する者にとっては、もう少し安いところを買わせて欲しい気持ちだ。

なお目先的には、きょう、あすが判りやすい買い場になるだろう。

●編集部注
今も昔も変わらない。決めうちは、時として我が身を死地に追い込む。

かといって、柔軟に相場に対応出来るかというとそうもいかない。

過去柔軟に接して失敗したトラウマが、人を意固地にさせてしまう。

【昭和四八年三月二九日小豆八月限大阪一万三六九〇円・四三〇円安/東京一万三七五〇円・五三〇円安】