昭和の風林史(昭和四八年四月十九日掲載分)

買い方持久戦 最悪場面を脱出

長い目で見れば五月中旬以降再び大衆人気が集中、現物在庫が多くても少なくても熱狂する相場。

「もろこ釣り琵琶湖狭しと並びたる 虚子」

今年の夏の北海道の天候は八月中旬から九月中旬にかけて低温が続き、日照時間の不足が予想されている。この期間は小豆の開花、結実という大切な時期であるだけに相場にもかなりの影響を与えそうだ。

今年は暖冬の関係で北海道の農作業は例年になく早いそうである。しかし心配されるのは発芽後の遅霜である。

目下のところ市場の関心事は交易会における小豆の契約状態である。大方の見方では三千㌧前後を予想している。これを嫌気して売られる場面もあるだろうが、相場の方は大体値段に届いている感じで三千㌧ぐらいの成約なら悪材料出尽くし気分で逆に買われる場面があるかもしれない。

見ていると市場はやや売り飽きの気分である。買い方主力も巻き返しにでる様子がうかがわれるし、連休、飛び休の行楽シーズンと五月節句の需要期を控えて相場が上向きに転ずればやはり買い急ぎ傾向が表面化しよう。

まして異常気象ということは、くまなく認識されている。かりにこの秋の小豆の繰越し在庫が六~七十万俵になろうと、今年の作柄が五~七十万俵という凶作ならば二万円の値がついても何らおかしくない。

大体高値の買い玉も投げるものは投げ終わっている。悪い悪いといわれている手亡相場がある一定の水準に達すると下げないということも、下げに限界があるわけで、小豆にしても改めて見直そうとする。

天災期をひかえているという大きな支えがあるだけに、ここまで下げた小豆をどのような弱気でも叩くわけにはいかない。

現物事情を知る者にとっては強気できないようであるが、現物をみて売って一万六千円まで持っていかれた苦しさを知っているから大衆人気が再び小豆に集中しないとも限らぬ情勢があるだけに俵をみて弱気するのも怖い。

ともあれ二回転、三回転利食いを利かした売り方はやや安値を売りこんだ形跡もあり千円戻しが、千五百円、二千円と勢いがつくと戻りを戻りといっておれなくなる。
小豆相場は最悪場面を脱しつつあるのだ。

●編集部註
 カンカンの強気一貫。この姿勢を貫き通すのは非常に勇気がいる作業。鋼の意思が必要になる。

 〝揺らぎ〟は負けている時より勝っている時にやって来る事が実は多い。

 「利食いドテンは愚の骨頂」という言葉がそれだ。

【昭和四八年四月十八日小豆九月限大阪一万一四三〇円・七〇円安/東京一万一二九〇円・一五〇円安】