4月20日付 メリマンコラム 《短期見通しおよび長期見通し》 その3
ご記憶の方もいらっしゃると思う。(冥王星と金星が山羊座入りした)2008年1月末、まさに世界金融危機という大きな塊が動き始めた時であった。当時、フランスのソシエテ・ジェネラル銀行に所属する詐欺師トレーダー、ジェローム・ケルヴィエルは(実際には存在しない)銀行資金500億ユーロ近くを含む違法トレードを行い、490億ユーロの損失を出した(と後の公判で明らかになり)。その結果、同行は一時破綻寸前まで追い込まれた。【註:後に復活】同時期、前年12月最終週から米国株式(NYダウ)は既に2,000ポイント下げていた。危機は進行中であったのだ。これに対して、当時のFRB議長ベン・バーナンキはすぐさまFF金利を4.25%から3.5%に利下げ。更にその翌週、3.0%に下げる。更に、この年の12月にFRBは金利をゼロ(実際の金利は0.25%)まで落とすという前例のない一歩を踏み出した。これが、以後中間層貯蓄者(金利生活者)の生活を荒廃させる事となるZIRP(the Zero Interest Rate Policy:ゼロ金利政策)の始まりである。その結果、貯蓄者はリスクがあるとは知りながら、あえて株式投資の道に入る事を選択していった。これはFRBの思惑、即ち株式市場が新高値を更新するまで上昇すれば、株式投資家の純資産は大幅に増加するという効果を含んでいた。
残念な事に、低金利で最も助けが必要な人々(中間層ならびに低貯蓄者層)はこの恩恵に与る事は出来なかった。そして彼らの生活に深刻な影響を与えた。富める者たちはより富を享受し、取り残された者はより貧しくなっていく。その結果「所得格差」という一般的な概念が噴出。米国を含む幾つかの国からは「富の再分配」の声が上がる原因となっている。FRB(と政府の後ろ盾)による価格操作で上昇した株式市場で儲けて富を得た人々は、FRBの意図を理解して“…(パックが)向かおうとしている場所”を運良く見つけたのに、悪党(villian)と化していた。