昭和の風林史(昭和四八年五月十九日掲載分)

踏み上げ寸前 ゆるまない相場

相場の基調は、ゆるみそうでゆるまない。買いにくい、踏みにくいで、結局どこかで爆発する。

「草に咲くあやめかなしく旅遠し 風生」

崩れてくるのかと思うと逆に高い。地合いにつられて売り買いするとチャブつく。

値ごろにとらわれると買えないようだ。

しかし、この相場に天井の現象は、なにもない。

日柄の面でも若い。

総踏みという場面もない。

熱狂するところもない。

きわめて穏健な足取りである。

だから買いにくい、踏みにくい。しかも消費地在庫六十万俵が目の前にぶら下がっていては気にするなと言っても気になる。

産地の気温は一貫性がない。異常に高かったり低すぎたり。月末から六月上旬の降霜予報も気になる材料だ。

線型を見ていると、まさに天候一本にかかって必死をかけているみたいだ。

将棋でいうなら一手すきの攻めである。ゆるむところがない。霜一発で売り方頓死ということになろう。ここからのストップ高七百丁は心臓にこたえる。ジリジリ締められるのもきついが、一発ドーンとくるのはもっときつい。各限居所が変わってしまうのである。

とりあえず今の環境からいえば、一万五千二百円という値段が見えている。

押したり突いたりで取りに行くか、火柱を立てて踏み上げるか、ともかく目立つ売り玉が踏み上げ寸前という状態だけに油断ならぬ。

手亡の相場も八千五百円以下には抵抗があって下げようがないところ。

手亡は悪い悪いと言われる。しかし、これも人気がまだ燃えるところまできていないだけで、値段としては八千五百円は買い場にこそなれ叩けない。

天候が悪ければ小豆はもとより手亡にも買い気が集中する。手亡の九千七百円あたりは取り組みさえ太りだせば案外簡単であろう。

五月も気がつけば半分を過ぎた。

北海道は小豆の本格的な播種シーズンに入っている。

産地相場が、その日その日の気温を敏感に反応して緊張した日々が続くわけだ。朝寄りの値段と、後場二、三節のの値段が特に激しくなるのもこれからである。

後場二、三節は、明日の朝の気象状況が反映するからである。

ともあれ相場は押し目を作ると強くなる。

●編集部注

大相場の勝利を邪魔するのは〝常識〟。意図的に筆致を抑えてロジックを積み上げている模様。

【昭和四八年五月十八日小豆十月限大阪一万三八九〇円・三一〇円安/東京一万三九八〇円・二九〇円安】