昭和の風林史(昭和四八年五月二十五日掲載分)

当面戻り売り 第一幕は終了す

下げは長引くかもしれない。天候相場の第一幕が終わったところ。千五百円下げか。目先戻り売り。

「夏炉の火消えたり山は雲湧ける 秋桜子」

人気一巡という格好である。小豆の作柄に被害が出たわけでもないし、雪が降ろうが霜が降りようが、それを充分に買ってしまえば、空虚なものである。

相場金言に「知ったらしまい」という言葉がある。不順な天候だからこそ一万五千円まで買った。

ここで相場の現実と理想をはっきり区分して考えなければならない。

〔相場の現実〕=低温。降霜。売り玉の踏み。四千円強の値幅を騰げた。この上昇は冷害を予想し、ある程度まで不作を買った値段だ。だが消費地にも在庫は豊富。そして規制強化を懸念するし、物価抑制にも気を配る必要がある。

〔相場の理想〕=播種が遅れると収穫期がそれだけ先に延長され早霜の被害が心配になる。これだけ不順な天候だから冷夏が不安だ。しかも世界的に食糧危機が叫ばれている時だ。四十六年当時は二万一千円にまで買われた小豆である。大勢は強気一貫でよいだろう。いまここで押すほど相場はスケールを大きくする。

先限で大台三ツ替わり。北海道先限は一万五千四百四十円高値(22日寄り)は三月10日の一万五千五百五十円と同地点顔合わせ。日足29本で下げた相場をVの字28本で戻したところ。

ひとまず発芽前の天候相場第一幕は終わったところ。高値を買いついた人はアンコールの拍手を続けるが、ここでひと息入れなければならない。

幾ら下げるのだろうか、それは判らない。七百丁とも言い、千丁ともいう。あるいは千三百円か千五百円か。少なくともここで千円棒の黒線一本をぶち込まなければ一万六千円、七千円の相場は付けられないだろう。

案外天候は急回復で順気。そして増反ともなれば青田ほめの六月崩しという在庫圧迫場面が展開されぬとも限らない。

千円ぐらい押したら―など押し目安心買いだと、天候にもよるが半値押し二千二百円下げは一万三千円という水準になる。

ストップ安もあろうし、安心買いの反動と、高値買いつき玉のぶん投げもあろう。ガタガタくれば芯からガタガタの相場になってしまうが、さりとて売り込めば、思うほど下げきれん。

●編集部注
相場勝利を邪魔するのは〝常識〟。仕掛けより利食いの方が難しい。

「休むも相場」というが、買いを利食いして上がったら悔しいし、反落したらしたで売りたくなるから厄介なものだ。

【昭和四八年五月二四日小豆十月限大阪一万四六三〇円・三七〇円安/東京一万四五七〇円・三五〇円安】