買い過ぎ現象 きつい反動安へ
市場の人気は依然として強い。しかしこの反動を警戒しなければなるまい。青田ほめの番がくる。
「ここまでを来し水飲んで去る 山頭火」
この小豆相場は、かなり長ひいた下げ過程を辿るのではないか、という見方。
先行きの天候にもよるが発芽期も無事に通り過ぎれば、一転して青田ほめになる。冷害・凶作と早くから決めて、上ばかり見ていた人気が、その時は支えのない低迷低落。
高値因果玉の重圧とカラ売り玉を踏んだあとの空莫さ。そして現物在庫の重圧。
騰げ幅四千四百円強の半値二千二百円下げ。
それは一万三千円という値段である。
焦点は、月末の低温と来月上旬の霜予報である。
月末は、先日の冷え込みよりは軽いように予想される。六月上旬の霜はどうだろう。気温は下がろうが、霜はよほど悪い条件が揃わなければ難しい。たとえ冷えても作柄に影響があるかどうか。そして、最も肝心なことは相場の内部要因が、その低温で、どれほど買いきることが出来るかだ。
誰もが、霜一発で湧いたところは利食いしようと手ぐすねひいて待っていたとすれば、空砲に終わってしまう。
おりから金融は更に引き締めの政策が取られている。内閣は物価高騰に対し異常なほど神経質である。目に余るようだと過当投機について厳しい態度に出ることも充分予想できよう。
筆者は思う。買い方が買って(煽って)(吊り上げて)どれほど相場が上にいくか。相場は売り方が踏むから勢いがつくのである。
それと同じように、冷害凶作を見越して高値を買いついた取り組みでは、五千円以上は利食い先行で頭を抑えられる。
相場は下げサイクルにはいっている。売り方の利食いも天候が不順な時だけに早い。売るのが怖い。売り警戒。ということは、裏返していえば安心買い人気ということだ。
例年六月の梅雨時分は下げ相場である。本間宗久伝にも「六月崩しみようの事」の一条がある。チンタラ、チンタラ、チンタラ峠のジリ貧相場。
買う材料を買ってしまった相場は下げるしかない。
売る材料を売ってしまった相場が四千円高したように、発芽前の天候不順を十二分に買ってしまった。
相場は戻り売りでよい。
●編集部注
この時の小豆相場を、平成二十七年現在の相場に例えるとなんだろう。
真っ先に脳裏をよぎったのはNYダウの月足である。下がる下がると言われ続けて四十数カ月。相場は未だに下がらない。
【昭和四八年五月二五日小豆十月限大阪一万四九五〇円・三二〇円高/東京一万五〇八〇円・五一〇円高】