噴き値売り勝負 買い方立ち枯れ
買い仕手は値を維持することに懸命のようだ。内部崩壊が始まる兆候が見える。噴き値売りで勝負。
「釣しのぶたしかに何処か降っている 万太郎」
買占め規制法で指定された十六品目ののうち羊毛、毛糸、綿糸、大豆、生糸と取引所先物市場の上場商品が五ツもはいっていることは、商品業界にとって今後に大きな問題を提起した。
買い占め、売り惜しみ規制法は、報告を求めたり、立ち入り検査して、買い占め、売り惜しみをやめるよう、心理的な面の効果を狙ったものだが、この裏には必ず税務署がくっついているだろうと言われ、その効果は徐々に発揮しそうに思える。
田中総理の記者会見で、十月までに物価を抑えると言明していることから政府は次々と強力な手を打ってくることも予想できる。
小豆相場のほうは買い方次第という動きだ。
買い方が積極的な手をふれば下げようとしている相場でも急反発する。
こういう状態がどこまで続くか、続いているあいだは安値を売るのは危険である。むしろ、仕手筋が煽り上げたところを軽く売る。
各市場とも仕手の活動を規制する動きになった。
買い方大手にすれば、サヤを買ってどこまでも突っ張りながら、折りを見つけて新穀出回りまでには戦線を整理しなければなるまい。
買い建て玉と手持ち現物に見合うだけのものを売りヘッジしなければならないが、仮にもその気配が見えたり噂になれば、今の相場はガタガタになろう。
市場の噂というものは案外真実に近いものを伝える。過去の大仕手戦でも、噂になったことを仕手戦が終わったあとで調べると案外真実に近かったことを知る。
今の小豆の買い仕手が世界的な穀物不足、世界的なインフレ、換物思想で思惑しているとしても、新穀の出回ったあとも、なお買い続けるということは、とうてい考えられない。
どこかでサヤがすべり落ち、また、なにか新しい突発現象が発生して相場の基調が今までとは違ってその裏目が出ることは、充分に予想出来ることである。
いま仮にこの相場がなお一段高したとしても二万円の声を聞けば、さらに規制は強化され、商いはもっと淋れるだろう。品物が無ければ貼り付け天井だが今年の場合、そうはなるまい。山高ければ谷深しだ。
●編集部注
相場に政治家が出てくると一つの節目になる。
何であれ、物事が紛糾してニッチもサッチも行かなくなった時、出て来て話をまとめるのは大物のヤクザの親分か政治家と〝相場〟が決まっている。
【昭和四八年七月七日小豆十二月限大阪一万八一九〇円・八〇円高/東京一万八四五〇円・一九〇円高】