昭和の風林史(昭和四八年七月十三日掲載分)

二万円目前に ヒビが入った?

「鹿追う猟師山を見ず」買い方も一本調子に走ると足元をすくわれる。規制強化も無視できぬところ。

「風鈴のそろはぬ音なれ二つ吊り 汀女」

今年はどうやら空つゆのまま明けてしまいそうだ。

大阪地方でのつゆ入り以来一カ月余の間の雨量が僅か一〇九・五ミリで、これは観測史上初めての少ない雨量だという。ここでも異常気象が顔を出している。

このため周辺都市で水道水が断水し、あと数日も降らないと水キキンは広範囲に広がるおそれがある。

北海道でも全道的に雨が少なく、農作物の一部には成育が止まったりしているというニュースもある。
雨が続くといやなものだが、こう雨がないと一降りほしいものと思う。しかしそういう時はなかなか降りそうにないものだ。

相場でもよく似たもので、下がって欲しいと思う人の多い時はなかなか下がらない。逆に買い人気の方が多くなると容易に上に行かないものだ。

ここへきて、イレも大分出たし、二万円乗せ必至、売る奴は馬鹿だという人気になった。従って応分の押し目も入って不思議ではない。

さて、アメリカでは今年は今のままなら大豆は大増収、前年比約三億ブッシェルの増収が見込まれている。三億ブッシェルというとトンに換算すれば八四〇万トンにもあたる。

日本の大豆の年間輸入量が三〇〇万トン余りだから増収分はその倍以上だ。アメリカという国の広さをつくづく感じる。

今度の小豆、手亡の上げは、アメリカの大豆などの輸出制限に便乗したムード的な買い人気によった点が強かっただけに大豆が現実に増収となり、輸出規制解除の動きでも出てくれば、大幅な反落は必至だ。

手亡が売られたのも輸入枠の発券という材料より大豆増収、その他雑豆も造酒という連想によるものだ。

買い方主力としては大豆と小豆は別物という考え方で、また押して売り込みが見られるとすかさず切り返してみせると腕を撫しているつもりと思える。

彼らには十二分の資金とこれまでの相場をとってきた強い自信がある。

しかし土用の入りまであと僅か一週間。

天候相場でなかった、今年の天候相場も最大の関門をむかえようとしている。

最後に笑うものは一連の買い方か、それとも売り方か。

●編集部註
この一週間後に、ブルース・リーが世を去る。
『燃えよドラゴン』が世界的にヒットするのはもう少し先の話である。

【昭和四八年七月十二日小豆十二月限大阪一万八八四〇円・三八〇円安/東京一万九一四〇円・三五〇円安】