作柄を見守る 全般に自粛気味
小豆相場は建て玉制限が厳しく全般に自粛段階にはいって高原相場。作柄の推移眺め。
「旱ばつの鋪道はふやけ靴のあと 久女」
土用三日過ぎると秋風がふくという。
月曜日の東京は涼しかった。長期予報では秋が早いというけれど、早や秋の風。少々早すぎる感じがしないでもない。
先週後半は、名古屋から大垣に出て桑名を回った。桑名には山梨商事の営業部長と川村商事の久松常務が来ていた。夕方から大花火大会があるのだそうだ。桑名一家は目下自粛中のようである。
野放しの鈴木栄氏。ちぎっては投げる丹羽幸一氏。大政に小政。桑名一家の顔ぶれは全部揃っていた。建て玉制限が厳しいから身をもてあましているようである。炎天の中を皆さんゴルフに出ていった。
悪魔に魂を売ったなんとかがゴルフに行っているあいだは相場が安い―というような事を書いたことについて、大変御立腹の様子だった。特に〝野放しの栄ちゃん〟などは、風林をぶっ殺してしまえと、いうことだったのかもしれないが、逢ってみると非常に気分のいい男である。
大垣の大石吉六氏は産地の旱ばつが相当ひどいようで、作柄にキズがついたら、このままでは納まらないと市場を心配していた。
桑名一家は今までの考え方に、なんら修正すべき現象を見出せない―としている。
先限で安値があって一万六千円。上値は自粛値段二万円から46年高値の二万二千円あたり。高原相場がつづくという見方。
名古屋での話題は大阪阿波座のアパッチ群が、キタやミナミで一晩百万、二百万円の豪遊をしているそうだが―という話。豪遊のほうは知らぬが、大酋長は今や引退して乙部の若酋長一族を統率して大変な人気を集めているようだ。彼らは国会が終わったら二万五千円に張りつけてしまうと豪語しているそうだね―と聞かれた。今やアパッチ族も昔とは違ってまだらの裸馬などに騎乗しない。ガイシャである。その資力たるや億単位であるから当たるべからざる勢力だ。
話変わって和光商事は〝蝮の本忠〟手を引いて韓国帰りの〝夜の帝王〟が引き受ける事になったそうだ。主務省も検査したばかりのところだけに補償組合に持ち込ませるわけにいかなった。
●編集部註
今回、戦後商品先物取引史上で最重要人物と評しても過言ではない御仁の名前が登場している。
書く側、書かれる側、双方まだ若い。行間からも油分が染み出ている。
対して今の国内商品取引は枯山水の庭園の如し。岩に染入る蝉の声である。
【昭和四八年七月二三日小豆十二月限大阪一万八二二〇円・九〇円高/東京一万八五〇〇円・一〇〇円安】