昭和の風林史(昭和四八年七月二十五日掲載分)

大義名分待ち 無言居合い抜き

大義名分のたつキッカケ材料待ちの買い方。65日の延長国会に期待する売り方。産地に焦点集まる。

「じっとして黒きかたまり夜釣船 つる女」

土用入り後、産地の気温は低い。日中の気温が上昇しないことには小豆の生育は止まり、作柄に影響を及ぼす。

小豆の二万円以上は立ち会い停止にするというようなニュアンスによって一般大衆は売り安心傾向だ。農林省が保証してくれるのなら誰だって売る。

相場には、売るから高いという現象のあることも見逃がすわけにいかない。

国会が再延長。

買い方にとっては嫌な材料であった。売り方にすればガード・マンを65日間延長契約したようなものだ。九月の27日までアパッチ族も騒げない。例年ならぽつぽつ釜ヶ崎の愛隣地区で騒動の勃発する時分だ。

きょう、大阪は天満の天神祭。大阪穀取は後場休会して麦酒を飲む。

大阪穀取は大層評判を悪くしている。市場管理の問題で、名古屋あたりは『大阪に裏切られた』―と憤慨することしきりである。

中井理事長も就任早々いろいろな問題をかかえ、しかも常勤理事がいまひとつ冴えないため難儀である。

嫌だ、嫌だというのに仲居さんは理事長に祭り上げられてしまった。それなら一期だけょ―と、決断してやる気になった出端を市場管理の問題や、取引員の経営問題などで暑い時に御苦労さんである。

神戸のビック(BIC)で大手の顧客が小豆を売ったり買ったりで、ガチャガチャになって、今を時めく桑名一家に、すがりついた。まず売り玉を全部踏んで、その損金を、すっぱり払った。買い玉だけを残した。絶対に無断で玉を動かさぬ事。利食い出来るものが出来た時は、請求に従って利食い金を支払う事。堅く約束をかわした。神戸ビックなら、そのくらいの約束をかわし、文書にしても、その場限りになりかねないという不安を常に抱かされるようだ。普段のお行儀が大切というもの。

相場は材料待ちの構えである。

寄らば斬るぞというのではなく、居合い抜きである。作にキズでもついたとか、なにかのキッカゲがあれば抜けば玉散る氷の刃(やいば)。桑名一家も川村組もアパッチ集団も蜂起することである。規制に対する〝うっ憤〟を爆発させることであろう。

●編集部註
関西では天神祭の頃に相場の節目をつけるというアノマリーがある。

【昭和四八年七月二四日小豆十二月限大阪一万八二四〇円・二〇円高/東京一万八四〇〇円・一〇〇円安】