昭和の風林史(昭和四八年八月二十日掲載分)

目先自律戻し 戻り待って売る

かなりの値幅を戻すだろうと期待している。戻ったら再び売り場だ。買い方も期待する。

「寺よぎる風のあはひのちにちろりん 宋淵」

意外にこの小豆は戻すのではないかという見方が支配しだした。

小豆の動きを前もって予測させるかのような手亡の相場が早い目に下げ止まり、すでに急反騰している。買い玉の整理もほぼ終わったし、市場人気は極めて弱くなった。

作柄もまだ決まったわけではなく、早冷、早霜の可能性なしとはしない。

千円戻しが千五百円、二千円ともなれば、戻りだとも言っておれない。

二十日の農林省発表をきっかけに、かなりの反騰がありそうだ。規制緩和もここまで水準を下げた以上は買い方有利な材料と見るべきだ―。

ひとつは値ごろ観である。売り飽き気分もある相場の習性から、大下げのあとだけに自律戻しがあってもおかしくないという人気になれば、そこは相場、ある程度の反発があるかもしれない。

千円戻し。千円棒を立てる相場なら出直りと判断する人もあるだろう。

買い方も辛抱してきた。地合いが硬化すれば、〝いけ!!〟ということになり元気も出てくる。これに逆らうこともあるまい。ある程度は反騰するだろう。

相場が急反発したからといって強気する必要はない。戻り一杯するまで眺めておく。小器用に戻りも取ろうなどと思わぬほうがよい。もちろん相場巧者なら縫うように下げも取り、戻りも取る手もあろうが。

相場のお臍は先限で一万五千五百円。ビキニ型水着のパンツをヘアーの見える程度まで下げただけで、ちょっとだけよという格好。いずれは膝のあたりまで下がるのだ。

どんなに頑張って戻しても一万六千五百円まで。一万五千五百円中心の下千円を八月十四日に付けている。お臍のあたりまで戻して、それから上千円はちょっとしんどい。

あくまでも大天井した相場の下げサイクルの中での戻しでしかない。

従って、もし仮りに急騰するとしても、その場合は次にまた下げるがための反発であるから狼狽することなく、どこで売るかを注意深く見守っておけばよい。

期待に反して戻しきれなければストリップである。一万三千円を割ってしまう。

●編集部注
 筆致に内観が見え隠れ。今回の文章の裏テーマは辛抱と堪え性だと、筆者は勝手に思っている。

 値動きに心揺らがず、あそこで信念を貫いておけばという例は枚挙に暇がない。裏返せば、百戦錬磨の相場師の心さえも揺らぐ場所が相場の節目となりやすいともいえる。

【昭和四八年八月十七日小豆一月限大阪一万四五七〇円・二二〇円安/東京一万四六〇〇円・二六〇円安】