昭和の風林史(昭和四八年八月二十二日掲載分)

8.27(日刊版08月24日付)

大底まで売る 大幅大下げ基調

大天井した相場が大底を取りに行く道中に幾度かの戻りがある。戻りは徹底的に売るのがコツだ。

「ふるさとや馬追鳴ける風の中 秋桜子」

戻した相場は売りである。小豆相場の大勢は売りの時代にはいっている。

どこまで戻すか?ではない。どれほど戻しても、売りでしかない。

気が楽な相場である。たとえば五百円ナンピンで売りあがっていく。

47年一月12日からの猛反騰のようなことがあっても、この相場三千円戻しは不可能である。

なぜなら、売り込み不足であるからだ。

戻せば戻すほど、あとの反落がきつくなるだろう。それは、天井を取りに行く上昇相場ではなく、明らかに大底を打ちにいく大勢下げ波動の中での戻りにすぎないからだ。

よもや八月14日の安値を底と見る人はいまい。

一段下げが終わって戻して次なる二段下げにはいる。戻りガ大きければ大きいほど二段下げ幅もきついのが小豆相場の定石である。

終局どこまで下げるかは、まだ判らない。一万三千円割れかもしれず、一万一千円台かもしれない。

規制が緩和されたら買いだという人もいる。一時的に規制緩和を好感して買われるかもしれないが、大勢には影響しない。

相場は、その時のムードが大切だ。今春二、三月時分のように、あらゆる商品が熱気にあてられて湧くようなムードを盛り上げてこそ上昇相場に弾みがつく。

今の相場は二回燃えたあとの崩れである。

六月20日から七月上旬にかけての大反撃はフィナーレであった。

それが七月十三日魔の金曜日に大天井した。

当方、市場は二万一千円、二万二千円、三千円は絶対の絶、大地を叩く槌(つち)がはずれようと、今買う玉は二万円絶対という空気であった。

あの時、農林省の役人が奇声を発しなければ、あるいは二万円に乗せていたかもしれない。

しかし早晩相場は崩れる運命にあった。

早いか遅いかの違いである。

相場というものは難しいものであるが判りやすい時もある。それは、天井した相場を見つけて大底まで売る時だ。下げ相場には戻りがつきもの。これは相場が呼吸しているからだ。

いまの小豆は実に判りやすい売り場にある。

●編集部註

 相場の常識は世間の非常識で、時として、狼少年が大勝する事がある。

【昭和四八年八月二一日小豆一月限大阪一万五四七〇円・三七〇円高/東京一万五六一〇円・三七〇円高】