戻り売り歴然 一段下げがある
どう考えても荷圧迫は免れない。相場は理クツ通りにゆくときもある。
「豊年の田明り汽車の中までも みづほ」
六日は大陸から優勢な高気圧が張り出し北日本を覆ったので札幌で初霜、旭川や帯広では初氷や初霜があったそうだ。
これがもう十日も早かったら、相場にもちょっとした波乱があったかもしれないが、もはやほどんど刈り取りが完了して、脱穀にとりかかっている状態だから全然影響はあるまい。いよいよ小豆相場は天候相場を離れて需給相場入り。
ところで五日に発表された九月末在庫数字を見ると、小豆の在庫は一年ぶりに減少した。
すなわち、道産物で約二万六千俵、輸入物で約一万九千俵それぞれ減少、合計で四万五千俵余減ったが、それでも在庫量は道産、輸入物あわせて七十一万七千俵強である。
これを去年の九月末の在庫量と比較すると輸入物では八万俵ほど少なくなっているが、道産物は去年の九月は僅か五千俵しかなかったから、なんと五十七万俵も多い。
したがって今年の需給相場は在庫量だけで見る限り昨年と比べてざっと五十万俵のハンディを背負ってスタートするわけだ。
もっとも外貨ワクが認められない以上、旧穀の産地在庫十万俵、既契約分輸入八万俵、それに新穀出回予想百七十万俵を九月末在庫に加えると実に年間供給量は二百六十万俵に達する。
国内の通常年間消費量を二百万俵とすれば、内地産の出回りを除外しても六十万俵余る。産地農業筋が六十万俵タナ上げに熱心な理由の根拠はこうしたところにある。
六十万俵のタナ上げが実施されたとしても、消費が伴わなければ品物は最終的にたまる一方となる。
消費を促進するためには値が安いことが必要。去年の十~十二月予想以上に出回りが多かったのはこの時期が年間の最安値に他ならない。
ところが今年はタナ上げを織り込んで先限一万三千円は、去年より三~四割も高い。インフレとはいいながらこれで消費が進むかは疑問である。
値を下げれば売れるが安値では売りたくない。生産者のその気持ちわからぬではないが売り渋りが強すぎると後に悪さを残す。
タナ上げの効果を過大に見ることは禁物。買いついたトガメが今週は出る。
●編集部注
四八年十月六日、ユダヤ暦で神聖なこの日エジプト・シリア連合軍がイスラエルを奇襲。この第四次中東戦争は約二週間後の停戦交渉まで続く。
この間、日本では大阪でトイレットペーパー騒動が起こっている。
【昭和四八年十月六日・休場】