昭和の風林史(昭和五七年五月十四日掲載分)

総弱人気だから強烈反騰

初押し買うべし。押した幅の倍返しは四千円指呼の間。若い相場は足が速いもの。

12、13日はT社買いの生糸、砂糖、ゴムの大掃除。まるで仕掛けにはまったみたいだし、楽屋裏では先に話がついていたのかもしれず、一般投機家は狐につままれた感じ。

小豆のほうは人気を一段と弱くしておいて初押し完了。

弱気は今月集中入荷一万㌧弱。作付け面積30%の増反予想。納会渡し物一千枚はあろう。六本木はともかく桑名の資金力は大丈夫なのか?―と、にぎやかだ。

買い方二本の柱の資金面については、なんの心配もないようで、受け準備は終了しているみたいだ。
集中入荷一万㌧は先刻承知の材料。作付け面積の増加は、むしろ好材料。外貨枠が絞られるし、天候相場のウエイトが高くなる。

小交易会の成約は、小豆を買いに訪中しているのだから買ってきて当然だ。

相場が安いと、人気がいわしめる弱材料に草木もなびくが、(1)天候相場を控えて(2)安値水準、(3)大底入れして、(4)相場が若いのに(5)売りたい人が多過ぎるから、この相場は上に行くしかないと思う。

取り組みは東西合計安値時から五千枚ほど増加している。これが三千円抜けのエネルギーになるはずだ。売り屋はどうしても安値安値を叩く。これを風呂敷に包みこんでしまうと熱したフライパンの上の豆である。勝手に煎れだす。

買い方の気合いは三千円台の自陣の中に土俵をつくれば表情もほころぶところ。相場の流れは初押しやや深かったが、倍返しの値がその分だけ伸びる。

いろいろとルーマー飛ぶ中で、見ざる・聞かざる・言わざる。流れに乗っているだけでよい。

●編集部註
 先月の当欄では、月足で1980年代の東京ゴム市場を振り返ってみたが、今回は日足レベルでこの時期のゴム相場を振り返ってみたい。
 本文中に〝大掃除〟とあるが、4月頭から下げ一辺倒であった相場が、黄金週間明けの5月6日に最安値をつけた後に反転し、12日から13日にかけてギャップアップしている事が見て取れる。
 翌14日の陰線で、相場はこのマドを埋め切れずに反転上昇。結局この値位置に戻る事はなく、2カ月以上にわたって上昇基調が続く。
 小豆相場と違い、押しらしい押しがない。これも一般投資家が嫌がる線形である。「一回押し目が来たら買ってみよう」と思ってると、あれよあれよと上昇してしまう。
 「買えない相場は強い」の典型例と言えよう。