味覚の秋も終わり

ラーメンも長らく食べず。値を知らず。ざるそばも、秋にはおわかれ、うますぎた。
道草の刈られしあとの曼珠沙華 景堂。
日中は暑いが、朝晩はとても凌ぎやすくなる。朝寒、夜寒という。
もう少し寒くなると、銀杏の実が入っている茶碗蒸し。近頃はスーパーでも売っているのだとか。なんでもいまは「チン」すれば出来る。
山野を走り回っている野生の猪のすきやきセットというのもあるのだろう。
鴨の水炊きセットに、少し豆腐を多めに加えた鍋もいいだろうな。
鍋は葱である。白い葱の半煮えがおいしい。―などと思っていると、もう食べた気になる。
食べていないのに、食べた気になるのは、よくよくその味を知っているからだ。
たとえば下関の「てっさ」。ふぐの刺身である。博多もおいしい。
鰹節と昆布で出汁をとった関西の「きつねうどん」。こんなうまいものがあるかと食通家がのたまわく。
東京の「ざるそば」も、それなりにうまい。
関西人は、「きつねうどん」といわれると、食べ慣れているからそんなにうまいとは思わない。
薄揚げを甘辛く煮たのを一枚乗せてある。
いまはラーメン屋に人気がある。ラーメンに一枚乗せるチャーシューは、いかに薄く切るかが味の秘訣である。
昔は、チャルメラを鳴らして、ラーメン屋が街を通る。窓を明けて、残業している人数分をどなると、持って来た。
いま、街のラーメン屋は一杯幾らぐらいしているのだろう。時代、時代で味も変わっていく。