百鬼園先生の随筆に、億劫帳というものがある。先生還暦過ぎの作品。その達観、些か早過ぎだろう。
ぽつくりと蒲団に入りて寝たりけり 亜浪。
一日中寝ていたらダメですよ、とヘルパーさんから。
たまにはテレビでも見て、起きている時間を長くしてくださいね。
あと、部屋の中で歩く練習もしないと…。
そんな事はしたくない。とはいえ、最近は原稿を書くのもままならず。殆ど冬眠状態だ。
熊は、冬眠前にしっかりと栄養を蓄えてから冬篭りする。
こちらは、たらふく食べようという気もない。
何もかも億劫なのだ。
腹は減る。ただ、その空腹がいとおしい。
百鬼園先生は、戦争のど真ん中で、初めから終わりまで、延々と旨かった食い物を書き並べた随筆を書いた。『餓鬼道肴蔬目録』という。
これは億劫とは違う。食への執着といえる。ただ読む方は、食べた気になる。それが楽しい。
昨日、田中貴金属に金を換金するお客が増えたというニュース。
早速気なすったか。
今、金が高いので、売りに来るお客さんがだいぶ増えてますと。
一方で、金を買いに来るお客もいるとか。
消費税が上がれば、今度売るときは消費税が逆にもらえますからね。
そこまで、金が上がり続ければ良いが、それは分らない。
円が安くなれば、東京の金も上がろう。
十年ほど前に買った金貨は、売らずにまだ手元にある。
換金が面倒臭かっただけの話だが、これも億劫のなせる業。
文鎮代わりに原稿用紙の上に置いてある。
見ているだけで良い。