ばってん、ばってん、よかばってん。熱いおじやでも作りたいが、冷や御飯がない。
山里や煙斜に薄紅葉 闌更。
夕方、ヘルパーさんが来て、湯豆腐を作ってくれた。
すき焼き鍋に白葱を沢山入れて、次の日の朝くたくたになった葱を食べる。そのための鍋を作っておいてもよいと考える。
朝も晩も、なにも食べないのが体によくないことは判っている。
水炊き風に、白菜の鍋になにか味のあるものはないだろうか。
味の濃いものは避けて、琵琶湖の鴨か、解禁されたズワイガニ、太めのうどんなどを放り込めば、薄口醤油で男やもめの一人住まいでも、銚子の一本、二本はいけそうである。
もっと寒くなれば、練炭火鉢でお湯を作る。
『お燗つけよか床敷きましょか』とは、誰も言ってくれない。
誰もいなくなった部屋の電気のスイッチをひねる。朝出たときのままである。
湯豆腐一ツ、つくれやせん。
だしをうまくとった〝おじや〟なんかに葱を刻んで放り込めば、さぞうまかろう。
御飯も炊かないから、冷や御飯もない。
ヘルパーさんは、用件を済ますとさっさと帰る。旦那が待っている。
相撲でもまた始まれば、気もまぎれようか。
横綱二人。日馬富士は、白鵬よりも強くなるだろう。琴奨菊、稀勢の里に期待がかかる。
毎夕六時、電話を頂く宇都宮の院長先生は、近頃少しお元気がない。
デスクの前に張ってある、金髪全裸美人は、毎日おはようと言ってくれるが、気乗りしないようだ。
それも、ばってん、ばってん、よかばってん。