昭和の風林史(昭和五七年七月二八日掲載分)

旗は鳴る鳴るラッパは響く

まだ本気で強くなれない人が多いから上げ足は非常に速いものになるはずだ。

産地の天気が悪い。この先も今のような天候が続くようだ。ここからの一週間十日が最大山場で、55年凶作時も七月下旬から八月中の低温が相場をS高連発で走らせた。

六本木筋も桑名もあと一週間頑張っていたら―と死んだ子の歳をかぞえる。

あの取り組みなら、期近の三万六千円総煎れ場面だ。

運は天にあり。勝敗は兵家の常にして、今あの時の弱気筋が強気に転換し、三万三千円→五千円を考える。世の中皮肉というべし。

『ひょっとしたら、今度は高値解け合いかもしれないね』―と。冗談じゃあるまいと思ったが、瓢箪から駒という事もある。

考えてみると〝大豊作〟予想を売った。そしてそれが陰の極になった。

今度は〝不作・凶作〟予想を買う番である。

人気面はまだ、ふっ切れていない。迷いの霧の中にいる人も多い。だからこの相場速いのだ。

安値取り組みで相場が若いこと。四の五の強弱考える必要はない。

相場などというものは時に、ちょっとしたヒントによるひらめきである。

概して歯切れのよい強気が聞かれないのは、まだまだ弱気が多いからだ。これは強気側にすれば結構な現象である。

久しぶりに「旗は鳴る鳴るラッパは響く」という場面が展開しそうだ。

すでに多くを書く必要もない。

相場を人体にたとえるなら目下「足」ができて、これから腰と胴体ができ、胸・肩→首→頭となる。

下げはこの逆の順をケイ線にはめて考えればよい。

●編集部註
 たらればの恨み言を言っているうちはまだ良い。詮無き事なれど、金銭的な損害を被る事はないからである。精神的な損害、運気の低下という面ではマイナスだが…。
 問題は、ここで乾坤一擲の復讐戦で買いを仕掛ける事である。損切りドテンは福の神というが、それは迅速に行わなければならない。間をおいて、ましてや、少し相場を見て、自分の思惑通りに展開しているのを確認してから動くと大概失敗するから相場は意地悪である。
 買い方の屍の下にはもう一つ地層があり、幾重もの白骨化し、怨霊と化した売り方の屍が眠っている事を忘れてはならぬ。
 人生は歩きまわる影法師、あわれな役者だ(シェイクスピア)。