昭和の風林史(昭和五七年七月二六日掲載分)

急伸型の相場になった?

新しい相場。若い相場。押してもすぐはね返す。意外な高値を足早やに取りに行く。

昔から売り玉利食いしたら必らず現物を持て―と雑豆問屋筋ではいう。

カラになっていた庭先を埋めるためにも小豆の売れ足が急。

商社筋も強気だ。現物の値上がりを最も期待しているのが商社であるから、値を崩す行為は採らない。

ホクレンも強気である。これは当然である。

一般大衆は総売りといってもよい。大阪自己玉は取引員の買いが急増。

向こう四カ月は納会がないということがこれからの相場の性格を今までと違ったものにする。

折り目、切れ目、きっしょというものなしのズンベラ棒は、買い方にとってまさしく楽である。

まして産地が土用という肝心な時期に天候が崩れている。

一般に、一本足のV型でなく、去年10、11月のようなWボトムを想定してもう一度安値を洗いにくるという用心深さだが、今週の天気次第では意外な上伸につながるだろう。

当面三万五百円と見る人。大引け足なら半値戻し三万一千円。

いやいや、輸入の絞り込みもあるし、作柄崩れならば三万三千円必至―と。

すくなくとも二万八千円を割ることはもうないと考えるべきで、新しい相場、若い相場の押し目はつくるが、基調は非常に強い。

聞けば、お客は売りたがるそうだ。売りたい気持ちはよく判るが、今は売るところでない。しかし売りたい病気にかかった人には、なにを言っても駄目だ。

週末の引け味は素晴しかった。今週は目の覚める上昇が展開されよう。

リズムは押してもすぐにはね返す強さを見せよう。

●編集部註
 大衆はすべて間違っている―。賢しらにこの相場格言を使うべからず。 勝負は時の運であり、大衆の逆を張っているようで、自分自身がゴリゴリの大衆であったという事にあとで気付く事がある。相場の場合、大概は勝ち戦を収めた時に失敗する事が多い。負けた者に不寛容で、自分が突然敗者になるかも知れない、などとは1ミリも考えない増上慢な状態といえる。
 相手が馬鹿に見えて仕方がない。こおいう人は必ずどこかで自滅する。自分の方法論に自信を持ち過ぎて相場の急変に柔軟に対応出来なくなる。
 最近は、何でもかんでも語尾に「症候群」や「ハラスメント」をつけると病気とみなされる。
 この手の増上慢を、当節では傲慢症候群(ヒュブリス・シンドローム)と呼ぶのだそうだ。