昭和の風林史(昭和五七年七月二十日掲載分)

強弱あわてることもない

ものの考えかたをまた一から組み立てていくところ。強弱にあわてることもない。

小豆市場は先二本だけの終戦処理段階。

16日までのことは済んだ事として区切りをつけ、これからの相場を考えてみたい。

一瞬にして三市場の出来高六万一千七百五十二枚。強制解け合いだから当然とはいえ、玉整理完了。

強気的考え方の土台となるのは、下げ値幅、新穀の値頃水準、玉整理、作柄はこれからの天候次第。そして二月10日天井からの日柄など。

弱気的考え方の土台は人気が離れてしまうことと現物筋の流通面の混乱が尾を引くこと。ヘッジする場所が先二本に限られ、向こう四カ月間納会がない。

ということは、新旧格差不利でも一応先二本にヘッジする。だから戻りを見て繋ぎが出るし、桑名手持ちの現物も圧迫要因になる。

今月末消費地在庫はふえるだろう。

普通なら天候相場で人気面がウエイトを占めるが、もう小豆はしないという人も多い。

取引員会社は、終戦処理に営業戦力を阻害される。

しかし、需給相場的色彩70%、天災期的色彩30%という性格になって、一挙にほどけた投機資金の、どの程度が小豆に再び取り組んでくるか。

市場には、まだ強化された規制が残っているし、仕手後遺症が出てくるのはこれからだ。取引員も大なり小なり被弾している。

このような時のモノの考えかたは、一度なにもかも頭の中のものをカラッポにして、原点に戻り、想を練ることである。

焼跡の釘と見るもよし。相場は相場と見るもよし。

また、休養するもよし。

強弱なしのところだ。

●編集部註
 この予言通り。穀物相場は斜陽銘柄となる。現在、小豆はおろか大豆相場も開店休業の状態になっている。値はついているが、商いがなければどうする事も出来ない。一度ケチのついた相場が昔の隆盛を取り戻すというのは至難の業であるという事を、我々は小豆以外にパラジウム相場で経験している。
 歴史を振り返ると、この時期、日本を見る世界の目が変わり始めた印象を筆者は持っている。
 この年の6月、FBIが行った産業スパイのおとり操作で日本の電機メーカーの社員が逮捕されている。
 この年のこの頃、国際捕鯨委員会で鯨の商業捕鯨の全面禁止が採択されている。
 日本は、良くも悪くも高度成長期を経て急成長してしまった。その代償を払う時期がここから始まったとも言える。