昭和の風林史(昭和五七年七月八日掲載分)

煽られると売り方は沈黙

買い方に煽られると売り方は声もない。先二本の戻りを待って売り直すところ。

疲れを知らない買い方に対して、売り方は精魂尽きた顔の小豆市場だ。

まさしく怪物である。

しかし本当に苦しいのは買い方だろう。

業界の指導的立場にある人、『小豆の上場廃止という方向に突き進んでいる。危機感以外にない』と頭をかかえていた。

一般的には二ツの流れがある。市場から離れる人。あくまでも長期持久戦で信念を貫く人。

強弱通用せず、力あるのみ。『これは相場ではない』と言う人もあるが、長い目でみるならば、やっぱり相場は相場だったということになる。

市場では六日、名古屋で巨頭会談があって今後の作戦について手を緩めない確約がなされたらしい―と。買い方の反撃が、人の口を借りて言わしめたのかもしれない。

七日、役所は東穀首脳を呼び出した。八日に予定されている衆院物価特別委員会での共産党質問に対応する準備のようだ。

緊急市場管理委員会もスケジュールにのぼる模様で、市場外が、なんとなくざわざわしている。

関係穀取は買い方が『決して無茶はしないと言っているのだから無策の策がよい』という考えもあるようだが、無茶をせんというのは、三万九千円以上の新値に煽らんという範囲でのこと、あとで穀取は泡を食うだろうと心配していた。

取引所には理事長権限という絶対的な力があるけれど、事務局が事態を楽観していては、理事長も動きがつかんのさ―と。

相場のほうは買い煽りの手が出ると売り方は沈黙してしまう。東京は、どんな空気ですか?と取引員社長に問えば『ただ、おろおろしているだけです』。

場面は、また閑になっての、やり直し。まいっちゃったね本当に。

●編集部註
 買い方も必死である。
 罫線上では、もう既に上昇トレンドではなくなっている。つまりここで突っ張る買い方には死相が出ている事になる。
 チャーチストなら、あきらめがつくだろう。しかしファンダメンタリストやこれまで腕力で何とかしてきた輩はそうはいかない。
 昔、商取マン時代に先輩社員「いつまでも同じ手が通用すると思うなよ」と言われた事を思い出す。
 何事も買っている時、優勢である時ほど人は驕り高ぶり不遜になる。大抵そこが〝くすぶり〟の始まりである。
 相場とは関係ないが、この年のこの日、日本では構成に多大な影響を与えた映画『ブレードランナー』が公開されている。