昭和の風林史(昭和五七年二月九日掲載分)

ゆさぶりがきつくなろう

波の荒い海域に入った。上昇角度が鋭角になったから、先限六千円抜けは売り急所。

小豆相場は期近限月から弾けている。在庫がふえないから売り方も二千丁替え引かされては踏まざるを得ない。

先限のほうは六千円乗せの三分の二戻し地点が売るなら急所である。

取引員自己玉の買いは七千八百枚をオーバーして記録である。ということは、大衆の値頃観による売りものが、あとを断たない証拠でもある。

近年の小豆相場は五百円引かされたら負けである。二千丁、三千丁引かされても頑張るという人は、稀にはいる。去年の七月、八月のあのきつい相場の火の中をくぐり抜けてきた人もいるが、増証と追証と、そして新規売り乗せの資金は、守りは(生き残るには)三倍の兵力ではなく攻めの四倍、五倍の資力を要す。

相場根性のある向きは、春相場の天井は毎年ある。天候と作柄が絡む夏の相場とは違うから辛抱第一と頑張っている。

また、これは一種の仕手相場で腕力だ。力でねじ伏せているが、一方では日柄を食い過ぎている。

出来高も3日、5日と煎れが出たし、上昇角度が相場終盤の鋭角帯に入った。

強気としては五千円台を買う以上七千円、八千円が目標であろうが、七千円、八千円台は昨年夏でさえ取引所や役所が大騒ぎした。あの時は建玉制限までいいだしたのに今回は黙っているということもなかろう。もし自己玉が買いだから、なにもいわないということなら、この世は闇だ。

それはそれとして、ぼつぼつ波の荒い海域に入るのでなかろうか。

筆者は曲がり屋だからなにをいっても始まらないが、もうすぐ流れが変わろう。

 ●編集部註
 ホテルニュージャパンの火災が鎮火してからまだ24時間も経過していない昭和五七年二月九日午前九時前、福岡から飛んで来た大型旅客機が羽田空港沖の東京湾に墜落。機首がポッキリと折れた。

乗員・乗客合わせて24名が死亡。149名が負傷。生存者で無傷なのは1名だけという惨事に、前日の火災で働き詰めであった東京消防庁は「泣き面に蜂」であったと思う。

 この事故は、心を患った機長が起こしたという点が話題に。着陸寸前でエンジンを逆噴射させ、滑走路手前で機体を急降下させた機長の異常行動に気付いた副操縦士が、羽交い絞めにして機長ごと操縦桿を引き、機体を水平にする事に成功していなければ、犠牲者はもっと増えていたとされる。

 「心身症」と「逆噴射」は当時の流行語になり、2つは同義語の如く扱われた事があった。

 2日連続で惨事が続き、当時の世情はしばらく不穏な空気に包まれていた記憶が筆者にはある。