昭和の風林史(昭和五七年二月二十四日掲載分)

納会つれ高の先限は売り

前二本は需給タイト気味で締まっても先の限月は、そうもいくまい。次期枠多い模様。

東京金取引所の第二回、第三回の会員資格審査で、第一回の時は審査基準が厳し過ぎたから、今度は申請があって基準にそうところは、どんどん認め、24日の理事会にかける。なお、第四回は三月三日を予定しているが、第二次までに決まった会員の中から、いよいよ取引員をピックアップ(26日取引員申請受け付け)し、これがセレクトされて役所に上がる。

だから、会員資格を得られなかったところは、当然、取引員の資格を得る権利を持たない。

かなりの数の会員が狭き門に最後の追い込みをかける。その熾(し)烈さは言語を絶するという。

小豆相場のほうは、『農産物の自由化これ以上は困難』鈴木総理発言で買い方は愁眉をひらいた。政治家の発言は掴みどころがないから難かしい。

〔―だから政策は信ずべし、されど信ずるべからず〕という金言が生まれる。

小豆当限は高納会という。物があって物がない、これは買い方の制空権下にあるからだ。

中国小豆の成約進行、そして次期枠の早期発券機運。買い方は、もう千丁ほど居所を上に持っていきたい。しかし六千円あたりは赤ランプが点滅する。

政策は信ずべし、されど信ずるべからず。畑振の癇癪玉を破裂させてもいけない。そこが難かしい。

商いのほうは白らけたふうで薄い。手口の薄い節で買い方が煽って抜ける。

売っている人は、これが強い相場に見える。実と見せて虚。虚と見せて実は孫子の兵法だが、実勢は果たして強いのか。

判らん判らんもう判らん―は金の取引員の顔ぶれが決まった時に落ちたところが発する言葉だが、小豆相場の弱気がいま、その言葉を口にしだした。

●編集部註
 虚と見せて実―。
 江戸川乱歩の名言の中に「現世(うつし世)は夢、夜の夢こそ真(まこと)」というものがある。
 小豆のような生産地市場が開店休業状態になって、為替の影響をまともに受ける消費者市場中心の取引になった今の日本の商品先物市場は、草木も眠る丑三つ時こそが真の値動きになっている。
 先日、為替会社のオンラインセミナーの講師としてカメラの前に座ったが、会場入りは夜21時。毎月、雇用統計の日はメディアも含め各所で識者がコメンテーターとして登場する。これも同じ頃にスタジオ入りする。
 昔と違って取引時間が格段に長くなった。為替取引では24時間を3分割した8時間足が分析チャートとして存外有効になっている。