昭和の風林史(昭和五七年五月六日掲載分)

人気弱いは結構な現象だ

買い方針も強気方針も不変。駄目底、底練り予定の新ポ安。五月きわめて急騰あり。

北海道10月限は新穀限月。

このサヤが買えなかったので落胆した格好。

市場は弱い材料ばかり目につく。新枠分の通関。集中入荷。梅雨期の荷圧迫など。

相場が緩むと売り方トークのボリュームがあがる。市場人気が非常に弱い証拠。

五月四日新ポは、先月の安値を洗いにいった。これで中途半端に強気しようとした人を、いっぺんにふるい落とした。そして売り屋に自信を持たせた。

これでよいと思う。

安値取り組みをつくるには、あまり早く強気がふえぬほうがよい。

値段としても、日柄にしても下げの限界に達している。売り時代の終わりを告げている。強気は、その事を知っている。だから売られるだけ売らせたほうがよいと眺めている。

弱気のいう新枠の通関も集中入荷も、実需不振も、今急に天から降ってきた材料ではなく、何もかも先刻ご承知。

だから三千丁を崩してきたのである。いうなら、蒸し返しである。

売り屋は、蒸し返しであろうと、なんであろうと、相場が安いのは、響いている証拠だと意を強くする。

新ポ安いことは早くから知っていた。新ポの安いところを買うのがよいと書いてある。

市場は、買い方大手の二本柱の玉整理ができていないから駄目だというが、この二本の柱は天災期に照準を絞ってのオペレーションだから、投げるどころか買いたい値段だろうと思う。

四月十分下げる時は五月きわめて急騰なり。まあ見ているがよい。

底ねり、駄目底―というところで方針不変。

●編集部註
 2月10日の高値から3カ月弱続いた1982年初頭の下降相場は、黄金週間の祝日明け、5月6日の安値で〝コツン〟と底打ちの音を立てる。相場はここから約一カ月間、上昇トレンドを形成する。
 穀物相場のいと深淵にして、難解かつ厄介な所は食べものであるという点。限月に加えて新穀、旧穀の価格差を考慮しなければならない。更に1 980年代は諸外国、とりわけ米国から日本の市場開放圧力が強かった。
 この辺りのえげつないやり取りの一端は、この数年後にソニーの創業者である盛田昭夫が書いた『メイドインジャパン』という本に載っている。
 今思えば、この頃既にグローバリズムの台頭でローカルな市場が壊れ始めていたのかも知れない。
 相場とは全く関係ないがこの頃、シブがき隊が「NAI・NAI16」でデビューしている。この頃の曲がり屋は、この曲がナイナイナイ、金がない、ナイナイナイ、もう止まらない―と聴こえ、イラついていたかも知れない。