モラル説教とポジション
全協連会長がモラル論のお説教をしていた時分の生糸事情を知れば、なんだ―となる。
今の小豆相場の大底は12月10日前後に入ると思う。
ひとたび大底が確認されたら人気がどうあれ、材料がどうだろうと強気の一本道になる。
その時の値段は、判らないが、二万六千八百円かもしれず二万七千三百円かもしれないし、二月10日天井から一万円下げ二万六千二百円かもしれない。
では目先的にどうか。目先はある程度戻すのが相場のリズムである。
相場は生きものであるから呼吸している。呼吸しているものにはバイオリズムがある。
戻してどうなるかといえば、また売られる。
そのような展開で来月の大底入れを待つだろう。
二月10日天井から十二月10日あたりまでの10カ月一万丁下げが区切りとなるように思えてならない。
大豆輸入のほうは地合いが悪い。当限のみが買い仕手の突っ張りで不自然な姿だがこれも本日納会。
買い方は受けて損。そのうえ機関店は業界の評判を悪くする。
ところで雑誌「経済ハイライト」の納富氏が、T社のN社長言うに『金屋玉排除の音頭をとっている全協連会長の店で今まで一億円損をした。その伝票類全部提供してもよい。損している時はどんどん玉を受けて、生糸みたいに利が乗ってくると騒ぎだす。ポジション・トークもいいところだ』と。事情通曰く。輸大は金屋が掴まっている。
金屋は難平買いさがっている。全協連会長店にも入っている。ついこのほどまで生糸の玉も百枚以上入っていたのに白々しいにもほどがある―と。
全協連の評判は非常に悪い。まだ清水さんや山本さんの時のほうがスッキリしていた。会長降りてもらったらどうかという声が高まっている。ポジション・トークの会長では困るのだ。
●編集部註
シェイクスピアの戯曲「リチャード三世」の中にこんな台詞がある゛今や我らが不満の冬も過ぎ、ヨークの太陽のおかげで輝かしい夏が来た。我らが一族の上にじめじめと立ち込めていた雲も、大海の奥深くに葬られた〟。
物語の舞台は15世紀の薔薇戦争。゛不満の冬〟とは敵対勢力の事を指す。 今回の文章で出て来る「金屋」と、権謀術数の限りを尽くして王位に就いた主人公、リチャード三世の姿とが、物語の終盤も含めて重なって見える。この時分の「金屋」には、このセリフがピタリと当てはまる。