昭和の風林史(昭和五九年一月三十一日掲載分)

小豆の騰勢ほぼ燃焼した

天井を確認してから売って十分に間に合う。なぜなら天井の次の日は底でないから。

さしもの小豆も山を越したという感じで、特に先二本は力を失いつつある姿に思える。

人気面では需給予想が根底から緩むまで相場基調は押し目買いである―としている。

強気の考えかたは(1)二月~六月限の逆ザヤ幅が詰まるまでは基調不変。(2)臨時枠は出そうにない。(3)春の需要期を控える。(4)市場における勢力は買い方が圧勝している。

従って売り込めば捕まるし、押し目買いである―と。

一方、一月限で騰勢を出しきったという見方もできる。(1)ひとまず売り玉の総煎れ場面で(2)出来高急増。(3)目立つ売り大手がドテン買いに転じた。(4)先二本週間棒は天井型。(5)大納言新穀が受け渡し用に出た。(6)行政(畑振)も風当たりがきつくなり、円滑な輸入をうながし、取引所行政(商業課)も異常逆ザヤの背景と市場振興策との絡みについて憂慮している―など微妙になにかが変化しつつあることを感じる。

俳句の季語に日脚伸ぶというのがある。曇りゐてさだかならねど日脚伸ぶ(湘子)。もうすぐ立春である。春の小川は、さらさら流る―の季節も遠くない。

相場に微妙な変化を感じるのも自然の現象であろう。相場で最も大切なのは流れである。

エネルギーを燃焼してしまえば、どのように環境(需給等)が有利であっても騰勢は戻ってこない。

強気は、上昇エネルギーは十分あると信じる。売って頑張っている人は、相場が緩むと、ともあれほっとする。

兵力を温存し、戦機・勝機・投機の場を求めている人は、どの商品と固定せず熟しきったところ、騰勢燃え尽きたところに出動してくる。

先三本の反発場面は売り場になると思った。

●編集部註
 腹が減ってはいくさが出来ぬ―。
 実際、戦力が高い集団でも兵站がしっかりしていないとボロボロになる。旧日本軍がこれだった。インパール作戦という最悪の軍事作戦は、恐らく後世まで語られる。
 人は命あっての物種というが、相場は資金あってのもの。資金管理は一種の兵站である。今回の記述は本家の孫子による風林火山の「林」と「山」の部分が特にフィーチャ ーされている。
 またアノマリーとして1月末から2月上旬は何かと変事が起きやすい。
 日航機が落ちたのも、赤坂のホテルが焼けたのもこのあたりだ。
 特に2月9日という時間帯は物故者も多い。この年の2月9日に当時のソ連書記長アンドロポフが急死した。漫画家の手塚治虫の命日も2月9日である。