昭和の風林史(昭和五九年五月一日掲載分)

軟弱場面で仕込むがよい

休日が多いからリズムに乗らない。材料面も手がかり難。基本方針に変化はない。

ゴールデン・ウイークとは映画娯楽最盛の頃の興業界で使用された言葉である。決してお金を払って映画を観る側が黄金週間ではなく、例えば来島どつくや佐世保重工で有名な坪内寿夫氏など、笑いが止まらぬほどお金が儲かった。その時分の造語。

話は横にそれるが坪内寿夫氏の書いているものなど読むと、会社再建の神様であるが、映画黄金時代に儲けた貯(たくわえ)があっての事が判る。

さて、商品界は、海外旅行に出発した人も多くひっそりしている。

小豆の相場も北海道のお天気が回復して買い方は、攻めのきっかけがない。

もともと五月第二週あたりからエンジンがかかるのだろう―と見られていたから規制に敬意を表わすところでもある。

目先的に少々下げたところで、強気陣営の方針が変更にならない以上、スライド的に臨増しのかかるスケジュールに沿って六月限買いが居坐っておれば、苦しいのは売り方である。

安値は売り玉を手仕舞う動きになるわけで、内部要因主導型相場と思う。

七、八、九の限月はあくまでも北海道の作付け予想。五、六月の天候。中国小豆の入船。節句需要などの絡みになる。

相場の癖としては毎月23 24 25 26日頃が頭になり、月の上旬安値を出しきる。

人間の気持ちというものは、安いと売りたくなる。高いと買いたくなる。もち合うと判らなくなる。

この気持ち通りに相場をすると損ばかりだ。まして商いの薄い時の高下は玉の出具合いであるから、大きな流れではない。決定した方針を変える時でない。

●編集部註

 気になったので調べてみた。

 「再建王」坪内寿夫は昭和九年生まれ。満鉄に勤め、シベリア抑留を経て昭和二三年に故郷である愛媛に戻り、映画館経営で一山当てる。この時期は黒澤明が「酔いどれ天使」や「野良犬」を撮っていた年。そりゃあ儲かった事であろう。

 昭和二三年は「国民の祝日に関する法律」が施行された年でもある。この法律で4月29日~5月5日まで休日・祝日が集中。多くの人が映画館に押し掛けた。これを好機とばかりに大映の常務が宣伝用語として昭和二六年頃から用い、永田ラッパで知られる大映の永田雅一社長が世に広めた―という流れである。

 映画に関する今この時期ならではの蘊蓄がもう一つある。毎年7月1日から15日にかけて、博多では祇園山笠が行われる。クライマックスの追い山は15日早朝。これに合わせて中州の映画館が朝まで営業。これがオールナイト営業の始まりである。