昭和の風林史(昭和五八年五月九日掲載分)

小豆は買い頃、番茶は出花

弱気一色の小豆のようだが、阿呆になって買いの種まけば知らぬうちに利が乗る。

輸入大豆の値付きが悪い。

長距離だと電話料金ばかり嵩むわけだ。

遠いシカゴの空を眺め、手数料の30円抜けがなかなか難かしいから厭きてしまう。

それでも五月第二週は平年並みなら26%の大豆作付けが終わり第三週で47%が完了。第四週64%まで進むことになる。

シカゴ期近のトレンドは微妙なところ。どうしても一度は六㌦20を割って玉整理(ふるい落とし)をしないと六㌦46~48の頭が重くなっている。

しかもこれから円高基調に向かう為替のようで、大衆筋期待の天候相場の波乱は買い玉投げさせられるというコースかもしれない。

従って今週強張るような輸大相場なら、買い玉逃げておきたい。

小豆は、すぐに相場にならずとも、安いところの先三本拾う。

積極的に強く見えたところで買うのはよくない。

安いところを拾っておけば二千円下げたのだから千円ぐらいは戻そう。

そのぐらいの気楽さというか、おおらかな気持ちでこの小豆を拾っておく。

相場は昔から運・鈍・根という。今の小豆は、これまでもそうだったが賢い人が皆損している。

取り組みが厚く、出来高も多い小豆花やかな頃は賢くないと小豆は取れなかったが、貧の極のような落魄(らくはく)した今の身の上では鈍が財であり、根気がなにより肝要だ。

さてゴムのほうだが、言っていた通りにしている人は、なんの苦もなく取れている。相場はもう精を出し尽くしているから期近を避けて戻す場面を再度売るだけである。

●編集部註
 経済白書の序文に「もはや戦後ではない」という言葉が掲載されたのが1956年。しかしGHQの戦後占領期の政策は1980年代になっても未だなお残っていた。つまり、この時はまだ戦後ではなかった、という事も出来る。
 「三公社五現業」という用語がある。そのうち「三公社」は日本専売公社、日本国有鉄道、そして日本電信電話公社の三つを指す。それぞれ現在のJT、JR、NTTの前身にあたる企業体なのだが、通信事業に関しては国内電話は電電公社、国際電話は郵政省管轄の特殊会社である国際電信電話株式会社(KDD)が事業を独占していた。
 当時の中曽根政権は三公社とKDDの民営化に動く。国鉄以外の民営化は85年に実現した。