昭和の風林史(昭和五八年十二月二日掲載分)

宵闇迫れば追証がかかる

売り玉の回転が利いてくると落下速度は早くなる。買い方師走の追証に投げてくる。

去年の小豆は11月→12月→1月と、のめり込んでいった。

11月二万八千九百円台の水準。

12月は二万七千五百円処。そして1月二万六千円処。

去年のパターンは春高2月~4月、青田底5月。夏天井6月/8月。秋底11 12月だった。

今年のそれは春高3月。青田底5月。夏天井7月/8月。秋底9月~11 12月の似たようなコース。

月平均五千㌧の輸入が三ヵ月続くと相場は潰れる。今の場合10 11 12月で平均七千㌧の入荷だから相場が崩れるのは火を見るよりも明らかだ。

11月納会をみて1月限の売り玉を早々と仕舞いにかかった。新穀の渡し物が心配という空気であるが、11月納会でも結構品物は集まった。

危険な予想であるが12月当限、大逆ザヤの1月限。この二本は大暴落の運命を持っていると思う。

もちろん2月限以降も三万円割れ二万九千円→八千円の大きなトレンドの中にあって、満目荒涼雪白しという場面を考える。

売り玉の回転が利いてくる事。現物受けた買い方は金倉馬鹿にならないし、先に望みがあるわけでない。

いずれ買い玉は宵やみせまると追証がかかる。

人々の頭の中は、ともかく凶作だったのだから―と先入感がある。

惚れた目で見りゃアバタもえくぼだ。

強気の心で見るから夜目遠目傘のうち。なんでもよく見える。

年末需要も一巡すれば正月15日過ぎまでは遊びである。売れない現物ひとまず定期に預ける。

内部要因は新しい血が入らないから取り組みはふとらない。

続落したあと、この期に及んでという水準から、S安だってあり得るという相場になっている。

●編集部註
 ここで「金倉」とあるのは倉荷証券の事。先物市場の世界に身を置いてはいるものの、やはり現物を持っている人間は相場に強いと思う。
 農産物ではなく、品質劣化のない貴金属の倉荷証券や株券を持っている人間は更に強い。価格変動リスクはあるが、最悪受けたり渡したりすれば良いだけなので、やはり充用有価証券を用いた先物取引が最強だと思う。
 今は追証と言わず、不足証拠金と言う。こういう所に時代を感じる。
 いずれにせよ、資金を全て建玉につぎ込むのは今も昔もよろしくない。
 限月による縛りがない銘柄も登場した現在、今は如何に多くの種玉を作れるかが勝敗を決める。
 それが、フラッシュ取引等に対抗しうるロートルの戦法かも知れない。