昭和の風林史(昭和五十年三月二八日掲載分)

知ったら仕舞 総弱人気の裏も

手亡相場に賭けてみたいところだ。相場は知ったらしまいである。存外反騰しそうな気配。

「行春をもの言いたげなる姿かな 子規」

相場金言に、知ったらしまい―という言葉がある。

手亡相場に、この言葉があてはまらないだろうかと思う。

手亡の一万二千円台は売っておけという安心感。

ピービーンズで叩かれ、末は一万一千円台割れとの見方が支配しているだけに人気の逆が出ないかと思う。

四月新ポ、九月限が登場するが、恐らく逆ザヤであろうと見られる。

しかし相場は、九月限が逆ザヤで生まれて人気が一段と軟化したあたりで底を打つのではなかろうか。

十六万枚から十七万枚の取り組みは手亡相場史上かつてない大取り組みだ。

一枚の証拠金を五万円として十七万枚で八十五億円の取り組み高だ。

十七万枚を俵数にすると六百八十万俵である。

昨年の手亡の収穫が五十万俵。繰り返し在庫六万俵にピービーンズを加えて、そっくりそのままあると仮定して六十万俵か。

六百八十万俵の取り組みは現物の十倍という勘定になる。

だからどうだというわけのものでもなかろうが、なぜ取り組みがこのように異常な太りかたをしたのだろうか。

証拠金が手ごろだからというだけでは、こうまでふくれまい。

小豆に比較して割安だという単純比較観もあるだろうし、天候相場に勝負を賭けるという玉もあろう。

先限一代二千五百円の棒下げを見てきて、取り組みは減らない。もちろん玉は大きく入れ替わっているだろうが、売り方にとっても、この安値でさらに売っていくのは、はやり無気味なことであろう。

そこで、ピービーンズの占めるウェイトであろうが、そういうことを言うのは素人だと言われるから、あまり口にしたがらないが、ピービーンズは総取り組みの一割にも満たない微々たるもので、ここまで下げた相場なら、もう、怖いものでもないと思われる。

日柄の面。人気の面。そして値段の水準等を考えれば、手亡相場が今までとは違った動きをしてもよい時分だと思わないだろうか。知ったらしまい。手亡は、いまこそ陰の極にきていると判断する。総悲観人気の裏が出そうだ。

 ●編集部注
昭和五十年は統計の起点となる事が多い。

日銀のデータによると昭和五十年の消費者物価指数を1とすると昨年は8強に。つまり単純計算で当時五万円の証拠金は現在の四十万円強に相当するという事になる。

【昭和五十年三月二七日小豆八月限大阪一万六八四〇円・七〇円高/東京一万六八二〇円・五〇円高】