熱烈なゲーム ぼつぼつ開始へ
作付け面積と反収。この掛け算で百万の数字を割る予想が出来れば小豆相場はゲーム開始になる。
「蚕豆のみのいるにつけて葉のあれば 虚子」
東洋経済から出ている『穀物戦争』(アメリカの〝食糧の傘〟の内幕)は、ソ連の穀物買いつけの謎を解き、つくられた食糧危機がいかなるものであったかが判る。
その中で「アメリカで農民になるには、数字に強い頭がないとやっていけない。いくら作付けをして、できた作物はどうやって売るか。それは農民の自由だが、この自由な選択権の意味がよくわかるためには、頭の痛くなるような算術をするだけの忍耐力がぜひ必要だ」―と書いてある。
また「シカゴのピット(立会場)では巨万の富がいまもなお、ひとかけらの情報をもとにして一夜にして築かれ、また崩れてゆく」。
「一九七二年の商品相場にやる気を起こしたアメリカ人の数は五〇万をくだらないかったはずである。みんな一攫千金を夢見た」。
一種の穀物相場の内幕みたいな読み物だが、われわれ業界外の人が読むと、いかにも奇怪で、世にも不思議な物語になるかもしれぬ。
相場する人の心理に洋の東西はない事を知る。
農民は数字に強くならなければならない。この事は北海道の農業従事者にしても同じである。
昨年、手亡を作付けした農家と大正金時を播いた農家とでは収入が天と地ほど大きく違ったはずである。
今年は手亡の作付けが大幅に減るだろう。
そして、何を播くか。投機作物の雄である小豆をどのくらい播くか。いまと価値の農家は頭が痛くなるほどいろいろ考えていると思う。
もうしばらくすると小豆の作付け動向が産地からつたわってくる。現在のところ最も少ない数字は小豆の四万一千ヘクタールである。少し極端すぎるかもしれない。だいたい四万七千ヘクタール前後という見方が続いた。
昨年が六万一千ヘクタールだった。二割減なら四万九千ヘクタール。二割以下という事はないだろう―と。
仮りに四万九千ヘクタールで反収二・五俵なら百二十二万五千俵収穫。二俵なら九十八万俵。
四万五千ヘクタールで反収二・二俵なら九十九万俵。
いずれにしても百万俵大台割れということになりかねず。先に行って相場の楽しみが大きくなる。
●編集部註
ここで出てくる農民は豪農。日本ではなかなかイメージしにくいと思う。
【昭和五十年五月十四日小豆十月限大阪一万六六三〇円・一五〇円安/東京一万六六七〇円・一三〇円安】