昭和の風林史(昭和五四年十一月九日掲載分)

精糖は危険水域 小豆底練り時代へ

流動的なイラン情勢と円相場の二ツが商品相場をゆさぶっている。それだけに見通しも難解だ。

「初冬や訪はんと思う人来り 子規」

円安の為替相場を睨み、イラン情勢を推理し、海外市況を参考にして相場を予測しなければならない。自然に商品セールスマンも横文字や海外市況に強くならざるを得ない。

小豆相場にしても、中国小豆の採算、入荷、台湾小豆の作況など、商社筋の動きを、たえず掌握しておかなければ営業につながらない。

北海小豆のほうは、これはホクレンの動き次第だ。

一般に、大きく買われる時期ではないから、戻りを待って売り場を狙えばよいだろう―としている。

商いのほうも、いまひとつ気が乗っていない。

三千円と四千円のあいだの底練りだろうという見方が妥当のようだ。

輸大は期近限月の線型が煎れを出した格好だ。六百円幅の棒上げは、ひと相場である。

為替やイラン情勢がからむだけに難かしいけれど、先限は東西とも自社玉売りが判然としている。

大阪1・2月限。東京12月限の自社玉は買いがとび抜けて多い。

このあたりの事情(自社玉ポジション)を、のみ込んでおけば大過なかろう。

それにしても大阪当限の輸大日足線は上値から三本陰線をかぶせて、一応頭を打った格好である。

精糖も先限日足線は上から連続陰線三本をかぶせて新ポ天井型。これをイラン問題と為替で切り返したわけだが、ゴム相場のように、高水準での波乱で時間をかけるのが国際商品の現在におけるパターンでもあるから、ケイ線の見方は難かしい。

ともかく精糖定期相場は実勢から離れたところでの投機思惑である。品物は先月の納会を見ても判るように、余るほどある。

今の相場は、海外次第、為替次第とはいうものの、昔、夜店などで小さな噴水の上にピンポン球をのせて噴水の上でピンポンのたまが踊るおもちゃがあった。あれみたいな気がする。水圧がなくなるとストンと落ちてしまう。

実需の裏うちが弱い精糖相場を力で買い上げても、無理が生じ、反動安がきついものになろう。

ところで7日付け当欄の東穀理事長から香港取引所理事長への手紙についてだが、東穀常務から『手紙の内容は苦情ではなく、日本での受託行為は国内秩序が混乱するので御遠慮願いたい』という内容であるとの説明があった。

●編集部註
 日本橋兜町に今もある東京証券取引所から鎧橋を渡った先、人形町の一等地に東京穀物取引所があった。一階に土産もの売り場があり、大きな鯉を抱いた金太郎の絵がプリントされたTシャツを何故か売っていた。

 今は取り壊され、立派な億ションが建っている。