商取界大底打ち 新年大出直り上昇
一年をふり返るには少し早いが、この一年で商取業界は10年来の大底を打ったと思う。
「さいかちの実はそのままの落葉かな 芭蕉」
暖かい11月が続いている。
今週末が、もう12月の1日だ。大納会までスケジュールがびっしりというのに、寒くないのは有り難い。
一年をふり返るのはまだ早いが、ともかく石油と為替の年だった。
そして来年も、同じようなパターンだろう。
国内の先物市場は、国際商品が海外相場に連動して、沈滞だったゴム取引所、砂糖取引所が、蘇えったのはなによりだ。
また、小豆、手亡の不振を輸入大豆市場がカバーして穀取の財務面は比較的安定していた。
上場商品流通の構造的な面で繊維取引所は、市場機能の発揮度が低く、特に大阪化繊取引所と大阪三品取引所は財務面で耐乏を強いられ、生糸取引所も、ものを考えさせられる〝痩せたソクラテス〟の一年だった。
業界上部団体の全商連、全協連は、キャパシティ一杯の稼動を続けたが、評価されることはなかった。
幸いにして(不幸にも)補償金協会は、機能を発動した。商取業界の信用保持に、いささかの貢献を見た。
両主務当局は、取引員の許可更新に忙殺された一年であるが、着実に業績をあげ、遅待なく目的を遂行した。
今年も、幾つかの取引員会社名が消えた。真に寂しい事であるが仕方のない事であった。
このように、この一年をふり返ると、わが商取業界も、変化の仕方が、見る目で見れば、あまりにも激しいものであった。
そして、だいたい、大底が入った。この大底というのは、昭和44年からの10年間、わが業界はジリ貧とドカ貧の下り坂一方という見方が出来る。そのグラフが、大底を打った。
取引員会社の社員がブラック・ゴールドに流れた現象も、視点を変えて見れば、経営者に、将来のビジョンと雇用問題を真剣に考えさせた。
この一年で、商取業界は、どのような事柄に対しても対応性のある事を、自から認識した。これは、大きな力になるし、なによりの収穫である。
一九八〇年は、大阪に三ツの取引所の集合立会場が実現する。将来の取引所統合合併への手がかりだ。また合板取引所が開所するだろう。為替と石油が不安定な限り、先物市場は、機能を高めざるを得ない。
●編集部註
太った豚より痩せたソクラテスになれ―。19 64年の東大の卒業式で東大総長が言った言葉とされる。しかしこれには3つの間違いがある、と2015年の東大教養学部の卒業式で引用された。これは平成の名文である。