昭和の風林史(昭和五四年十一月十二日掲載分)

小豆期近底抜け 輸大は円安で買う

大阪輸大の自社玉は売り買い接近している。小豆の自社玉は東西とも圧倒的に売りが多い。

「いへばただそれだけのこと柳散る 万太郎」

海外市況、たとえばシカゴボードのリスクを負担し、フレートのリスクを勘案し、為替変動に危険をさらし、しかるのちに国内定期の変動に気をくばる。

商社のビジネスマンは、あれでよく神経がもつものだと、そのタフなことに感心する。

夜遅くまで仕事をしていて、帰路、スナックバーのボトルをかたむけながらもニューヨークが気になり、ママさんちょっと電話をかしてや―と国際ダイヤルをまわす。

輸入大豆相場は、中国と為替にふりまわされている。輸大とは、売るものなりと覚えた大衆筋の売りが期近ほど面白くない。

品物はあるが、品物がない。穀取期近に渡す玉がないというのが今の市場の表情である。

中国という国は、約束の堅いはずの国であるが、まだ近代国家になっていないから商取引に関しては、頼りない事おびただしい。

売るとか、売らんとか、あそこのお国のかけ引きは日本人に歯がたたない。

精糖相場は海外高でも反応が鈍い。取組みは、やや売られている。相場としては海外も買い疲れの様子で、あとは先月納会を受けた商社の力の入れようというところ。

まあ今月も、品物は結構集まって、倉庫は砂糖であふれている。三百枚は渡るのではないか。

東京―大阪トラックでキログラム当り六円七十銭。機帆船なら四円四、五十銭で移動できる。来るはずのなかった九州からでも、値は荷を呼んで先月納会、あけてびっくり。

御堂筋の小鬼も、砂糖市場では?まった格好だ。

線型は、売り線になったり買い線になったりで、高値波乱を繰り返し、頭デッカチの重い姿である。

現物の売れ行きはさっぱりだし実勢遊離の相場を、為替とロンドンにひっかけても相場様は、もうしんどいと言っている。

さて、小豆のほうは静岡筋の手仕舞いで期近は一代の新安値である。

静岡筋にしたところで、もうこんな小豆につきあっておれない―という気持ちであろう。

いまの小豆相場は、まったく無味乾燥。せいぜい自社玉のポジション(圧倒的な売り)を参考にして、深入りしないことであろう。いずれ一枚が80俵という事になれば、逃げた人気が戻るかもしれない。

●編集部註
 テレックス時代の相場師たちを心から尊敬する。

 その昔、外銀のディーリング部にはテレックスのテープをさばく人がいたという。

 どんなテープかは『スティング』という映画をご覧戴きたい。