昭和の風林史(昭和五四年十月一日掲載分)

五千円あたり 売られるための値

◇…小豆の目先は線が買いを示しているから、売られるための戻しを入れよう。人気硬化ずれば終りだ。

「焼栗やまた近くなる雨の音 幹彦」

◇…商い不振で破産寸前の香港商品取引所が、日系取引員のアドバイスにより輸入大豆を上場する方向に努力していた。そして近く香港政庁の正式認可を得る模様。

現在、香港商品取引所は綿花と砂糖の先物取引を行なっているが、取引所開設(一九七七年五月)以来、売買皆無の日もあって市場は機能していない。

そのようなことから、上場商品の問題、売買仕法の問題を日系取引員が主となって洗い直し、輸入大豆を東京穀取方式で新規上場、売買方法もザラ場取引でなく、単一約定値段にする。

◇…この方法が成功すれば現在のザラバ取引を全面的に改め、また、上場商品の追加上場を進める。

◇…先般筆者は、香港の商品先物取引事情を勉強するため同取引所を訪問したが、『金銀業貿易場』(金銀取引所)の盛況に比べ、まったく眠った取引所の感があった。輸入大豆の板寄せ取引で、どこまでこの取引所が活気を取り戻せるか興味が深い。

◇…週末の小豆相場は引けで反発した。

線型が目先買いに転換しているだけに、こういう事をする。

次期ワク削減という材料がついてまわるだけに、二万五千円あたりは、無い値段ではない。

しかし、それ以上のものでもない。地合がよく見えて飛びつけば、それまでであろう。

二万五千円が六千円→七千円という可能性が、少しでもある場合なら投機家も真剣になろうが、精一杯で五千円どころ。

◇…戻せば、どこでホクレンが売ってくるか判らない。ひと場で地合が転換する環境だけに、立会中は黒板の前に張りついて各節セリを聞ける人でない限り、五百丁取りにいって、七百丁引かされ売り買い手数料を計算すれば、詮ない事になる。

◇…新ポ登場する三月限は、これは台湾小豆に影響される限月でもある。

例年10月、11月は観光がてら台湾小豆の視察団体が組まれるが、今年は、業界の景気もよくないため、ツアー参加者も少なかろうと様子を見ている咋今のようである。

◇…ともあれ、売られるために戻している小豆である。当面五千円どころは、ないかもしれないが、あれば人気は更に強くなろうから、申し分ない売り場になるだろう。

●編集部註
 ゴムならINROが、小豆ならホクレンが市場に介入していた頃の相場が懐かしい―。

 そう思う古参の相場師は、少なからずいらっしゃるのではないだろうか。

 神の見えざる手は、時として大きな恩恵を与えてくれる反面、大きな雷を落とす事もある。

 大なり小なりの雷を身体に浴びて傷を負いつつ、癒えれば、たちまち戦場に向かう。それが相場の世界なのかも知れない。