昭和の風林史(昭和五四年十月三十日掲載分)

戻るのを待つ 買う事を考えない

小豆相場は、戻るのを待っていて、また売るというパターンである。買う事は考えないほうがよい。

「草もやす白き匂ひや野路の秋 治郎」

この小豆相場は戻すだろうが、戻せばまた売られる―という相場観が定着して、相場の意外性という、投機のロマンはない。

その意味から小豆のビジネスにとっては、価格の安定は、危険負担が少なくてよい。しかし、価格変動による値鞘取りを主にする投機家にとっては、魅力に欠け、市場に介入する積極性を失う。

今年の小豆相場は八月7日に天井を打って、九月21日に一番底。立秋天井、彼岸底の格好になった。

十月25日、ホクレン売りをきっかけに二連続S安で九月の安値を切った限月、市場、切らない限月、市場であったが、八月天井に対して二番底型と見ることが出来る。

日柄的にも、昔から言う〝三つきまたがり60日〟に接近することから、11月、12月にかけての年末相場を期待したいところである。

しかし、今注目されている下期外貨ワクが、どうであれ、輸入される小豆の量というものが、およそ決まっている。

また北海道産の古品小豆の繰り越しと、豊作だった新穀が売り場を待っている。

供給面は、充分にゆとりのある小豆だけに、上値には限界というものがある。

まして、ホクレンという巨大機構の組織が、年々先物市場(穀取市場)の利用の仕方が巧妙になって、一般大衆投機家は、わけもなくひねられてしまう。

市場には、ホクレンだけでなく雑豆輸入商社が、これまた巧みなオペレーションを展開し、投機家の介入する余地がない。

このような市場であればこそ、相場は買うだけが能でない。売りだってあるわけだから投機家も売りポジションに立てばよいのである。
要は、どのあたりの値段を売るかである。ただし、大衆が、その気になって売り込めば、売り過ぎた取組みが狙われる。

取引所取引きは場勘戦争であるから、充分取組みが売られると、わけもなく売り玉の煎れを取られることになっている。

いうなら、これが先物市場の仕組みだ。そのような仕組みの中で、本来的には大衆を顧客とする専業取引員が、大衆の味方となって大衆に加勢する。情報を提供し、アドバイスする。これがなによりも専業取引員の顧客サービスである。市場の好不況は取引員の姿勢次第と言える。

●編集部註
 どうせ戻りは売られる、と高を括り、実際に相場は戻り、そこから売られ、安値を更新する。ほぅら、ヤッパリと次の戻りも売りかかると今度は突き上がる。すわ、買い転換と買い参入すると今度は大きく下げる。その頃には、資金が底をつく…。