昭和の風林史(昭和五四年十月十八日掲載分)

相場を育てよ 売るのはそれから

小豆が売られるために重い腰をあげようとしている。ホクレンは相場を育ててみてはどうだろう。

「秋の燈やゆかしき奈良の道具市 蕪村」

一九七三年(昭和48年)はシルバー、シュガー、ソイビーンズの3S商品が投機の主流をなした。

目下、先行した金、銀相場は一応天井型をして高値圏で遅行商品の砂糖などの上伸を待っている。

日本の砂糖取引所はロンドン、ニューヨークの相場暴騰の熱気を移し、また円安に影響されて商いが弾み、草木もなびくように粗糖、精糖に投機筋は移動している。

要するに世界の砂糖の需給が大幅に改善された事が、この相場の芯になっているから値頃観で売っては、ひどい目にあう。六年目のシュガーサイクルに乗ったばかりで、ロンドンの百五十一?の大きな節の値は取る流れになっている。

ところで名古屋市場は小豆も輸大も自社玉が買いになっているという。

大阪は、まだ小豆の自社玉は売りが多いが、輸大は売り買い接近している。

東京市場は輸大も小豆も売りが圧倒している。

三市場における微妙な自社玉の変化を、どう見るか。輸大に関しては、これは円安の分だけ値段を上げる。シカゴ市場を見ていると小麦、とうもろこし、大豆、綿花の大豊作で、おりからの高金利時代で、農民は、現金化を急ぎ、高金利の恩恵を受ける側に回わるのである。

大阪輸大相場は先にも書いたが七百五十円の関門を抜いても八百五十円はどうか?というところ。しかし自社玉が下長(買い)になるようでは軽卒に売るのは見合わせるべきだ。

先般上京の折り、自社玉の事について清水正紀氏から『風林は自社玉についての考え方が間違っている』とお叱りを受けたが、清水さんの自社玉についての考え方は理解出来るが、相場強弱についての自社玉の読み方を小生は書いているわけで、それも絶対とは言っていない。自社玉で取引員が苦境に立つ相場もある。要するに確率の問題で、投機家は、自社玉が売りの場合、買うのは不利な結果になりやすいという事。

などと言っているうちに小豆が戻している。

一般的には五千円台は売り上がりという見方。中には六千円近くがあろうというが、売り込みが多ければ五千五百円を付けても変ではない。

付ければ、もとより売りたいものだ。クリスマスプレゼントになるだろうと思う。市場は、嫌なぐらい冷静である。

●編集部註
 ここで登場した3Sの中で、銀だけは後々ハント兄弟による買い占めであった事が判っている。

 買い売りを問わず、本尊の末路は大半が不幸だ。

 あれこれ書くよりも、チャートを見ると解る。