昭和の風林史(昭和四七年七月二十一日掲載分)

戦況不利なり だが必勝の信念

上空を飛ぶキラキラしたB29爆撃機を見る思いである。腹だたしい買い方。男は黙って我慢する。

「夏来てもただ一つ葉のひとつかな 芭蕉」

手一杯筒一杯買った買い方。身を切られる思いである。観念して目をつぶる。

運は天にあり。勝ち負けは兵家の常。勝敗また時の運。

大阪はマの字の筋のマルモト、丸神が叩きまくる。東京は山梨が叩く。叩いても言うことを聞かなかった相場が、いうことをきくようになってきたのは、帯広の天候が売り方に味方しているからだ。

19日の相場では、それほどでもなかったが20日の朝の相場を見ていて、なにか不吉な嫌な感じがした。へたすると、一発崩れがくるぞ―と暗い気持ちである。先限の九千二、三百円あたり。

しかし、半面では、悪く見える今が、案外止まる値段で、うかつに叩き込むと逆襲で大きくひっかけられかねない。目をつぶって、腕を組み辛抱するところか、とも思う。すなわち、それは迷いである。

言えることは、ベタに買われたということ。取り組みが重い。崩れるとすれば、その面から崩壊である。

道農務部七月15日現在調べによると小豆の作況は〝なみ~やや不良〟である。作柄は決してよいわけではない。

だが18、19日の産地の高温を軟派は、巧みに利用して買い方の防衛線を一気に破った。東京先限百円電光足は急所を蹴られた格好だ。

買い方にあたえる心理面の動揺は、あなどれない。

しかし、ここで筆者は腹を据えて、よし勝負だ運は天にある。台風に賭け天気予報に賭ける。そしてどれだけ多くの読者が信頼して買っているかということを筆者は充分承知している。読者の信頼にこたえて風林は貧乏することも敢えて辞せず。それは一種の終電車に乗り遅れたときのあの気持ちに似たものである。よろしい。叩かば叩け、崩れるなら崩れろ。男は黙って辛抱する。

強気する理由がなにを見てもありゃせんではないかと言う。

いやそうじゃない。日柄だけでも充分のところだ。値段、一万円以下にはマッカーサーもへきえきした人民軍の人海戦術の買いがある。作は、やや不良だ。安値の売込みだってきついものがある。

場面が変われば、一変する相場だ。一夜明ければ相場はどう急変しているか判らないのである。

●編集部注
迷いの門から正信までは、ただの一瞬・・・

 -オマル・ハイアーム『ルバイアート』より

この一瞬の迷いが、後の相場の明暗を分ける。

【昭和四七年七月二十日小豆十二月限大阪九九二〇円・一三〇円安/東京九九四〇円・一五〇円安】