昭和の風林史(昭和四七年七月二十六日掲載分)

天神底を構成 出直り案外近し

今のような状態の相場が今週いっぱい続くと大底を構成して、出直りにつながるであろう。

「みづうみの夕焼消えし松江かな 米城」

今週、このあたりで相場が小高下していると、底が入ってしまうだろう。

ケイ線も、実体の短い、寄り引けが、くっついた、いわゆる尖(こす)んだ格好で、ナベ底を型どろうとしている。

値段のほうも、気分ほど下げたわけではない。

短い線ではあるが、その一本一本は、売り方にとっても、買い方にとっても、全力を投じて、その結果記入されたものであるからおろそかには出来ない。

やはり、天神底である。新値足四十二本。騰げにしろ、下げにしろ新値四十二、三本は天底をつける。いまのところ、これと申して買い材料が見当たらないけれど、相場というものは、必ず不思議なぐらい底がはいると、買い材料がどこからともなく出現する。

値段にしても下げるものなら、とっくの昔に大下げしているはずだ。やはり、日柄で下げ相場の末期に来ているのと、価格の面できつい抵抗ができている。

そして取り組み面も、安値で売り込んだ格好。

買い手も手一杯買っただろうが、売り方も、やはり充分に売った相場である。買い方は、半ば横になって天まかせ、運まかせ、あとは日柄の目を数えるしかないと心境。それは一種の達観でもある。

反対に売り方は、ここにきてコツン、コツンとする底堅さに、なんとなく焦りの色が見えるのだ。安いところは手仕舞おうとしている。そうしている間にも相場は自然の大底が出来てしまう。

日柄で大底を打ったあとの相場は、存外売り方が自分の手で自分の首を絞めたりするものだ。売るから反発する。それは大天井圏で買い方が買うから暴落するという現象と、まったく同じである。ものの三百円、今の小豆が反発すれば、どのように変化するか手に取るように判るのだ。

気になる産地の作柄はまちまちだという。普通なら大豊作の声が聞かれてよいのだが、いまだ平年作、あるいは八分作が言われているゆえんも、案外、作況に波がありすぎるからであろう。これから産地の天候は崩れるところにくる。相場の出直りは近いと思う。

●編集部注
相場を読むより日柄を読めと昔から言われる。

素人は相場の縦軸に目を奪われがちだが、玄人程相場の横軸に注目する。

大きなサイクルは、より小さなサイクルを内包する。しかし大サイクルの終盤では、内包する小サイクルが延長、短縮される事が多い。これが日柄を読む上での注意点だ。

【昭和四七年七月二五日小豆十二月限大阪九八四〇円・一〇円高/東京九八四〇円・四〇円高】