強烈高の前兆 爆騰は必至なり
力がついてきた。だんだん強くなる。底がはいっているからだ。案外な上値がありそうだ。
「たらたらと手花火色をこぼしけり 旭川」
相場自身に少しずつ力がついてきた感じがする。なんという材料もないのに値が締まる。結構閑な市場に売り物が届いているけれど、それを消化して三百円棒を立てるあたり、底打ちムードのあらわれである。
台風が六号、七号、八号、九号と天気図に四ツも発生している。その中には本土直攻の可能性を持つものもある。
日本列島風水害。大阪地方も朝から車軸を流すような大雨で雷公も、とどろいた。車軸を流す、車軸を下すとも言う。まるで車軸のような太い雨が降ることを言う。
九州地方は特にひどい。昨年のように肥後小豆に被害が出るかもしれない。
東北六県の集中豪雨も気になる。今年は壬(みずのえ)だから水害が多いのかもしれない。高島易断によれば〝雷沢帰妹五交変〟。ここにも水の象が出ている。冠水冷害ありの卦だ。
とにかく天災期である。油断はならない。
海員連合のストによる停船停貨、ここに大型台風の襲来―などということになれば港湾も倉庫も当然混乱におちいる。
売り方は増反、順気を期待するけれど、買い方は天変地異を予想し、風水害に病虫害。そして北海道の冷夏、日照不足を思惑する。
すでに下値にとどいた―と相場は言っている。私しゃ下げやせん―とも言う。それじゃ一杯いきますか、と場の引けたあと山大商事の店頭でガラスのコップになみなみと清酒をついでくれた。ここには米相場時代からの為替(かわせ)足の秘法を習得している山形順三郎氏がいる。ちょっとや、そっとでは教えてくれないが、お酒がわまるとそうでもない。
聞いた話では小豆の現受けをして、どうにもならないので缶入りの水ようかんをつくったところ、なんと月産八十万個でも足りないほどで受注百二十万個だと言う。後発の名も通っていない銘柄でこの調子だ。恐るべき水ようかん。安ければ、結構需要は伸びるのである。
さて、七月七日の七夕(たなばた)さんに大底打って、今出直りつつある相場は、もう一度下げても天神底。下げたところで下値は浅い。下げずに高ければ先月末の高値を抜いて一万一千五百円から七百円が天神祭りの前後にありそうだ。
●編集部注
天神底―。この手のアノマリーは、たまにハズれるから難しい。
【昭和四七年七月十一日小豆十二月限大阪一万〇三一〇円・一二〇円高/東京一万〇三四〇円・一八〇円高】