昭和の風林史(昭和四七年七月四日掲載分)

叩くのは危険 安場は買いです

馬鹿に弱い相場であるが逆ザヤ傾向は安値を叩いては急騰しかねないという信号である。

「汗垂れて彼の飲む焼酎豚の肝臓(きも) 波郷」

馬鹿に弱いな―という感じもする。

しかし、旧穀は逆ザヤの傾向である。逆ザヤに売りなしの相場に、なろうとしているようにも見える。

ここから安かったら買い下がってみようという考え方。決して反対するものではない。

作柄が決まるまでは、今のような逆張りの動きが続くのかもしれない。

左様。

作柄は、いつごろ決まるか。

土用にはいっての七月20日ごろから八月20日ごろまでに、およそ大勢は決定するだろう。

大豊作なら、それから売っていけばよい。

平年作なら大底が入ってしまう。

四月25日九、九七〇円交易会成約でつけた安値。

五月25日一〇、二二〇円。

六月22日九、九八〇円。作付け六万四千ヘクタールで付けた安値である。

こう見ると、万円割れは叩いては取れないということになる。

およその下値が、そのあたりに、自然、自然に出来たようである。

さりとて、積極的に強気しても、現在は支援するものがないからワッと湧けば、一局の相場がすぐ終盤になる。従来の相場なら千円棒を立ててから勢いに乗っても結構取れた。それがどうだろう。高値掴みになってしまうということは小相場から脱していない証拠である。

その意味では上値に限界がある。一万一千三、五百円が精一杯だ。

下も一万二百円あたりから九千七、八百円どころ。これ以下には叩けない相場。

作にキズがつくかどうかは運まかせ、天まかせである。キズがつけば熱狂しよう。取り組みは風林が弱気を書くので安値で売り込み傾向と言う人もある。それはどうだか知らないが万円割れを売り叩いた期近限月は、儲かりそうで儲からない格好になった。

どうだろう。ここから安いところは買ってみる。とにかく買い玉を立てる。あと安ければ買い下がって二、三百丁あるかなしだ。

ワッときて強いところ、新穀の一万一千二、三百円から五、六百円あたりまず売ってみる。

「槿花一朝の夢、この下げは深い」―と、きのうは書いていたではないか言うなかれ。深いかもしれないが浅いようにも思える相場になった。

●編集部注
 その昔、東京金が千円割れする直前、市場がこんな空気になっていた。

【昭和四七年七月三日小豆十二月限大阪一万〇五一〇円・一〇円安/東京一万〇四九〇円・一〇〇円安】