昭和の風林史(昭和四七年三月二三日掲載分)

失神相場終了 日柄かけて回復

失神相場も落ち着きを取り戻せば日柄の経過で回復していこう。先に行けば増山氏の恨み相場だ。

「鉢の土乾きてかなし桜草 風生」

失神しそうになった。名付けて買い方失神相場。

22日(水)も太平洋が分投げている。朝寄りで千四百枚の売り。ちぎっては投げ、ちぎっては投げ、ええいめんどうだ全部投げてしまえとばかり切腹した格好である。

大玉を投げる時は頭から蒲団かぶって、目をつぶるしかない。

さて、市場は一万円割れ必至という空気である。豊富な在庫の上にタナ上げしていた増山氏の現物が堰(せき)を切ったように氾濫すれば、一万円割れもあり得る。

東京市場では、太平洋が投げたので、下げも終わりに近いとばかり、ワッと買ってきた。大阪も、このあたりの値ごろから天災期を目がけて買っていけばモノになるという見方もあるといって、安いところは拾われる。しかし、戻ったら売ろうというのが、市場全般の空気である。

戻ったら売ろうが、戻り待ちに戻りなしになるかもしれず、あるいは、あっさり戻して売らせてくれるかもしれない。そうなると、売られながら高い相場になって、先限の一万三千円あたりは付くことになる。

筆者の予想だが増山氏の定期の建て玉(買い)は、五百枚もないのではなかろうか。

考えられることは手持ち現物を種にして、戻りをつないだり、あるいは売り叩いておいて逆襲をかけたりキメ細かい作戦(参謀は、その場合、霜村氏になろう)をするのではないか。

ちょうちん筋の大きな玉は七分目まで整理されたが、マバラの玉は、まだ半分もなげきっていないようだ。

さて、これからの予想だが、筆者は、案外千五百円幅ぐらい、軽く反発出来そうに思う。

北海道の天候も楽観出来るものではない。春の交易会では、かりに値を下げてきても量的には契約は少ないだろう。そして相場が落ち着けば需要が伸びるはずだ。

あとは、戻り売りで売り込まれるのを待つ。大相場の整理は、まず値幅の面では終わっているし、取り組み面も風通しが随分よくなった。
あと日柄である。

いずれ先に行って、増山氏の恨み相場が必ず出現するだろう。
失神相場も、日柄の経過で、とみに回復していこう。

●編集部注
この頃は〝失神〟という言葉に馴染みがあった。
記事は世相を反映する。
この文章が出る数年前、失神する女優さんや失神するGSのボーカルなどが登場している。それを受けての「失神相場」だ。
相場を待ち構えている様子がひしひしと伝わる。

【昭和四七年三月二二日小豆八月限大阪変わらず/東京一六〇円安】