昭和の風林史(昭和四七年三月十八日掲載分)

再度底値鍛錬 彼岸底を構成中

順ザヤ化してきた小豆は底値を鍛錬するほどに彼岸底型を固めよう。筆者は強気方針である。

「霞む海磯に寄せ来ても音もなし 秋桜子」

博多から北九州、そして下関を回って帰ってきた。門司港は春雨に煙っていた。博多の各取引員も下関の取引所も、かなり活気づいていた。

専業取引員は毛糸相場に重点を置き、営業活動には大手亡を考えている。

関門商取員は砂糖から大手亡に商いを移そうとしている。

大手亡相場は、証拠金も低く、六千円割れの水準は輸入品との競合にも勝てるし、さらに安ければ輸出も出来ることから、今の水準は買いさがって妙味があるようだ。

さて小豆相場のほうは、いいぐあいに底入れ反騰と見えたが筋店の売り(山梨、山大、脇田など)で地合いを悪くした。

もう一度、安値を叩いて底値を鍛錬する必要があるのかもしれない。時期から言って彼岸底型である。

市場では、取引所運営面で、いろいろな材料が出ている。

北海道穀取は21日の会員総会で九月限から端境期間中、外国産小豆の供用を決める。

東穀取では中国小豆台湾小豆などの別建て上場を四月実施の線で検討していたが難かしいようである。

一方、市場では台湾小豆の品質悪が問題になってきた。水分が多いため梅雨(つゆ)を越すと商品価値が大幅に低下するだろうと言われる。

仕手筋に関する動向も、大阪阿波座筋の弱気や山梨の積極的な売り、そして近藤紡らしい岡地の買いなど、目まぐるしく、目に見えない裏側での駈け引きは、なかなか焦点が定まらず掴めない。

こういう時は、昔から相場は相場に聞けという。

どうなんだろう。底入れ気分で買ってよいものか。

戻りは、たとえどのような戻りでも売っておけば、すぐ利になる。やはり戻り売り一貫なのか。

M筋の動きは、とみに精彩を欠く。なにかあると見るのは、今では常識となっている。

目下目標値は一万一千五百円という声も耳にするようになった。そうだろう、ここから売るのなら一万二千円割れを考えなければ売れない。

しかし相場は徐々ながら順ザヤになっている。人気が、こうも弱くては、売るのは危険に思う。

●編集部注
 門司-下関間の連絡は、非常にあっさりしている。

 この当時と現在で違うのは、新幹線用の関門トンネルと関門橋が出来ていないだけ。橋の方は、この翌年に開通している。

【昭和四七年三月十七日小豆八月限大阪一万二七九〇円・二二〇円安/東京一万二八五〇円・一七〇円安】