昭和の風林史(昭和四七年三月十日掲載分)

反発は間近に 投げ一巡をまつ

ジタバタすればホコリが立つばかり。安値を拾っておけば間違いない。

「種蒔いて暖き雨を聴く夜かな 鬼城」

猫の目のように地合いが変わる。

地合いにつられて売ったり、買ったりしておればいくらお金があってもどうにもならないだろう。

ここはたとえ売りであっても、買いであっても信念をもって貫くべきところだ。

六日には中共側が売り値を下げてきたということでS安をつけたが、その事実は確認できなかった。

八日は山東小豆が前回なみ値段(トン当たり一七六ポンド)で数百㌧契約できたということから後場急落した。しかし、これも一部ではビルマバターのオファーと混同されたのではないかとも報道されている。

また買い方主力Mグループの資金繰りを懸念するニュースなどが流れたり強弱いずれも風の便りの噂に一喜一憂して振り回されている格好だ。

相場は材料で動く。しかし材料をそのまま鵜呑みすると、てきめん消化不良をおこすことは請け合いである。

北京商談の窓口がひらかれている以上、いつ契約が出来るかもしれないが今の相場では輸入しても妙味がないのは明白である。

以前には外貨ワク消化のために採算を度外視して輸入する場合もあったが、いまでは追加発券が必要なぐらいで採算割れの契約は進むはずがない。

もしそれでも実際に契約ができたのなら、むしろ先高見込みを輸入商社がもっていることと見てよいのではないか。

エコノミックアニマルの尖兵は商社であるといわれる。

商社のもっている情報網はわれわれの想像以上のものらしい。例えば三井物産や伊藤忠あたりの情報網はアメリカのCIAにも匹敵するだろうといわれている。

どれほど情報をキャッチしていても、もちろん相場となれば大商社でも大きな損をすることがありうるのは、目下弊紙に連載中の「相場は燃えているか」に見られる通りだが、損をしてまで輸入することはまずありえない。

今後もこの値段で契約ができるとすれば、むしろ強気的な見方もできるもと思う。

昨日前場三節あたりかなり商いもあって取り組みの内容も変わったし、新規の売り込みもみられた。

今日の長期予報を手がかりに相場つきが一変する可能性が強い。
買いを貫くべきである。

●編集部註
 
先週28日の日経新聞の文化欄に、40年前の未完の映画が今年公開されるという記
事が掲載された。

主人公は、今日の文章に登場する〝エコノミックアニマルの尖兵〟として、ベト
ナムに赴任している商社の駐在員。これを川津祐介が演じている。

商社の商いには、充分注意する必要がある。ここでは大手商社の名前が出てくる
が、本文によく登場する三晶実業さんも小豆の商社である。

十数年前も、貴金属市場で一部の商社の売りに一般委託玉は悩まされた。

情報を持っているだけでなく、腕っ節も強かった。

一般投資家向けに商品取引員の看板を取って○○フューチャーズという子会社も
やっていた。ただ、機を見るに敏なり。その大半が今はもうない。

【昭和四七年三月九日小豆八月限大阪一万三六〇〇円・一七〇円安/東京一万三六九〇円・一九〇円安】