昭和の風林史(昭和四七年三月四日掲載分)

線型は沸騰型 当面五千五百円

怖い怖いで買いきれない人が多いから相場はズンズン伸びる。当面一万五千四百円が目標。

「麗かやなにか忘れしともちがふ 由樹雄」

陽気がよくなると人の出が多くなる。鐘一ツ売れぬ日はなし江戸の春―などといって、人出とともにあらゆる品物が売れていく。

小豆も末端が動き出した。

買い控えていた実需が需要期入りと、定期高に刺激されて現物の売れ足が早い。しかも輸入ものの入船が遅れたりして、この面からもひと相場期待出来そう。

一方、買い方は、ここにきて意を強くしている。自信というものをさらに強めた。それは信念である。五千五百円は、手のヒラの上にある。

現物の消費を眺めながら、一気に値を出さず、売り込みを待ちながらそおっと相場を育てる。

一万五千五百円(先限)から上は、時の勢いである。畳を一枚一枚はがすように踏みを取って行けば人気の雷同もあって一万六千五百円あたりは、付けておかしい値段ではない。

線は七月限で四千四百円→三千四百円の千丁下げをV字で返した。そしてこの倍返し地点五千四百円。こう見る。

その値は付く。

なぜか?。

なぜでもだ。

見えているのに買えない人が多い。それは人気が強くなりきっていない証拠である。そうだろうと思う。輸入小豆がウズを巻いて入荷する―という頭がある。それと春の交易会。中国は幾らでも売ってこよう。だから買うのは怖い。

怖い怖いで手を出さないから相場はズンズン上伸する。八万俵から十万俵をタナ上げしてしまい、入船は遅れるし、需要最盛期にはいるし、高値因果玉は投げ終わり、安値には売り込んだ大きなシコリがある。

いずれにしても相場は生まれ変わった。一本一本の線は伸び伸びしているし、商いが伴っている。これは、なんといっても強い。

おそらく売りの親玉三晶は再びキリキリ舞いである。

小豆の一万三千円相場は大底圏という絶対的な保証が、二度の叩き込みで実証されたのだ。今年が大豊作でない限り四千円割れを売っても駄目だということ。

今年が豊作か不作かは五分と五分、それに九月下旬までは照った曇ったの気象図眺めて、すべての関心が北海道に集中するのである。

●編集部注
 「天井三日底百日」と言う相場格言がある。

 逆に「天井百日底三日」という相場もあるのだがこれは稀有な例だ。

 買い方の夢が、売り方のガソリンとなる、その好例がこれから始まる。

【昭和四七年三月三日小豆八月限大阪一万四五六〇円・二三〇円高/東京一万四五七〇円・二八〇円高】